日本顎口腔機能学会雑誌
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咀嚼筋活動からみた小児の咀嚼発達
田村 康夫
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2006 年 13 巻 1 号 p. 11-15

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抄録

我々は, 小児期における咀嚼機能の発達を筋電図学的に検討してきた.
1. 音刺激に対する小児の顎運動について, 速いあるいは遅いリズムにはついていけなかった.またリズムの安定度は年齢とともに正確になっており, 上位中枢と顎筋の協調が確立してきていることが伺われた.
2. tooth tapping時において, 筋の静止期 (Silent Period, SP) を観察した結果, 小児の方が全般的に約2ms長かった, また咬筋における下顎張反射とそれに続くSPを観察した結果も, SPは小児の方が有意に長く, SPの開始点には差がなくSP終了点に差があった.この結果は筋活動の瞬間的な停止から再び活動を開始するまでの時間が小児の方が長いことを意味すると考えられた.
3. 小児と成人における上腕二頭筋と咬筋の筋電位電動速度MFCVを計測すると, 咬筋では小児の方が遅く, 増齢とともに速くなっていた.
4. 咬合力発揮時における咀嚼筋活動と瞬発性について検討すると, 乳歯列期小児から成人まで咬合力は著明に増大し, それと同時に咀嚼筋活動も増加し, また咬合速度も大きくなっていた.
以上より, 発達段階にある小児は, 咀嚼筋のパワーのみでなく, 瞬発性においても劣っており, これらは成長とともに発達していくことが筋電図学的に証明された.

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