抄録
日本では頭頸部の関節可動域の研究は非常に少ない.電子式Goniometerを用いて, 頭部屈曲運動および頭部回転運動時の関節可動域および運動軌跡を27名の被験者を対象に記録した.頸部関節可動域はこれまでの報告と比較し, 前後方向ではアジアでの研究結果と一致していた.しかし, 側方の可動域はこれまでの報告結果より大きな値を示した, 関節可動域に関しては前後方向・左右方向で利き腕・年齢・男女間に群分けして比較し, 利き腕・性別では群間に有意な差はなかったが, 若年群では後方位・側方位で高齢群より明らかに大きな可動域が観察された.前方位に差がなかったことから前屈時の関節可動域の制限因子として加齢変化が影響する筋や軟組織ではなく, 前屈運動時の形態的因子が関与すると推察される.頭部回転運動軌跡を水平面に投影したところ, 特に頸部に症状を訴えない被験者にも運動が円滑でない例が認められた