抄録
咬合に関する診断や治療を客観化するために, 咬合面形態の定量的評価方法を確立することは重要である.咬合面形態のなかでもっとも重要なのは咬合小面であり, われわれはこの咬合小面を定量的に評価するための新しい方法ならびにパラメータを開発してきた.今回, この新しい評価方法についてその有効性を検討したので報告する.
研究方法: 3名の個性正常咬合を有する被験者の歯列模型をCNC3次元測定器 (マイクロコードFN503, ミツトヨ社製) で測定するとともに, 下顎滑走運動を6自由度顎運動測定器にて測定した.これらのデータを基に, 各咬合小面について咬合参照面を設定し, この咬合参照面について咬合小面評価用パラメータの値を計算した.
パラメータ: 咬合小面傾斜角および咬合小面の法線ベクトルの方向余弦x成分 (以下AP値) を, 定量評価のために使用した.また咬合小面の向きを定性的に表すため4種類に分類した.
結果および考察:
1.AP値は咬合時の下顎の前後的変位に対する抵抗の度合いを表すことができるパラメータである.咬合小面傾斜角とAP値を用いることで, 咬合小面を数学的にだけでなく, 機能的に評価することが可能となった.
2.歯列の3次元測定と数値解析から, 咬合小面の方向を分類することが可能となった.各咬合小面はその機能的特徴から, 作業側M型, 作業側D型, 非作業側M型, 非作業側D型とした.
3.咬合参照面より求められた咬合小面傾斜角とAP値は歯列上の部位によって規則的な変化を示した.さらにこれらの変化は, 各被験者の下顎運動を反映していた.
以上の結果より, これらのパラメータと新たに開発した評価法は, 咬合面形態の定量的評価に用いることが可能であることが示された.