日本顎口腔機能学会雑誌
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赤外線反射光を利用した多標点運動解析法の補綴学的応用の試み
土田 幸弘大竹 博之河野 正司河野 世佳林 豊彦山本 修吾石塚 貴博森谷 眞也
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1998 年 5 巻 1 号 p. 71-77

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抄録
咬合機能の回復を目的とする補綴学において顎運動を知ることは大変重要なことである.そのため数多くの顎運動測定装置が考案され, 6自由度で下顎任意点の運動を精密に計測できる装置が開発されている.しかし, これらの装置では顎を剛体とみなし測定用クラッチを歯列を介して顎骨に強固に固定することが不可欠である.その結果, 十分な固定源が得られない義歯装着症例への適応は困難であり, 顎運動に関して不明な点が多い.
今回我々は, 義歯装着者に適用可能な6自由度顎運動測定装置を開発することを目的として, 赤外線反射光を利用した顎運動解析システムを構築した.装着する測定用クラッチは上顎用49, 下顎用29と非常に軽量であり, 装着した状態が義歯の維持を可及的に損なわないこと, 頭部無拘束にて生理的な運動を阻害しないことを条件とした.
以上の条件下にて測定対象空間を一辺200mmの立方体と設定し, 電動パルスステージを用いてその性能を検討した.
その結果実用上の位置分解能は, 前後方向で, およそ0.3mm以下, 左右および上下方向では, 0.2mm以下であった.
今後の課題として, 測定精度の向上, 下顎任意点の入力方法の検討, 機能運動時の義歯の動揺の把握が挙げられる.これらの課題を解決し, 今回構築したシステムにフィードバックすることによって, これまで困難であった義歯装着者の顎運動計測が可能になると考えられる.
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© 日本顎口腔機能学会
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