社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
特集 ポスト真実と民主主義のゆくえ
国民国家と民主制
ロバート・ダールの論考を手がかりとして
上田 耕介
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 103 巻 p. 73-93

詳細
抄録

 英国のEU離脱、トランプ政権の誕生などの動きに対して、それを非合理な反動と見るリベラル左派から、盛んに批判が行われている。しかし本稿は、これらの動きが合理的であると論じていく。そのために本稿は、ロバート・ダールの晩年の論考を手がかりにする。それは、移民の増加と、国際組織の影響力増大、国民国家の弱体化に関するものである。

 ダールによれば、①移民は民主制にとって厄介な問題を引き起こすため、移民を無制限に受容すべきでない。②国際組織は非民主的であり、民主化する見込みもない。③国民国家が近い将来消滅することはなく、国民国家の民主制が機能するためには、ナショナリズムが欠かせない。

 こうした議論からすれば、近年の「極右」台頭は、当然の帰結であり何ら驚くべきことではない。それをもたらしたのは新自由主義者とリベラルの連合である。かつてのポランニや近年のトッドが、ダールと同じ方向で議論を展開している。

著者関連情報
© 2019 東北社会学研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top