2023 年 108 巻 p. 75-94
本稿では雑誌『家の光』を通し、農協による高齢者福祉活動の展開について考察する。農協は組合員の高齢化に対応すべく、一九八〇年代中頃から高齢者への生きがい対策と福祉活動に乗り出し、一九九〇年代にヘルパーの養成に力を入れていく。二〇〇〇年代に入り活発化するミニデイサービス活動が、介護サービス利用への抵抗感を減少させることで、デイサービスの事業化が進んでいく。そして、この展開には、「六〇年代嫁世代」の多様な背景と、協同組合の相互扶助原理を反映した、農村女性による福祉活動への支援があった。この側面に、農村における「介護の社会化」の特徴が示される。