空気調和・衛生工学会 論文集
Online ISSN : 2424-0486
Print ISSN : 0385-275X
ISSN-L : 0385-275X
コージェネを主体としたエネルギーサービス事業における燃料価格変動の影響とそのリスクヘッジ
坂内 正明柏木 孝夫秋澤 淳冨田 泰志石田 康久島 大資土方 薫
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 30 巻 96 号 p. 63-73

詳細
抄録

産業ユーザーや業務ユーザーが省エネルギーを実現する手段の1つとして,エネルギーサービス事業(ESCO)が急速に普及しつつある.しかし,ESCO事業は初期設備投資回収のため一般に長期間の事業になるため,燃料代,電気代や事業所操業度などの変動がESCO事業の安定な継続に対して大きな影響を与える.特に,コージェネを主体としたESCOの場合では,燃料代の事業コストに占める割合が大きく,その変動リスク低減は事業成立に不可欠である.一般に,燃料価格変動リスクをヘッジする手段に,石油業界等で燃料デリバティブという金融取引が用いられており,ESCO事業への適用が期待される.しかし,ESCOメリットは,燃料代以外に電気代の変動の影響も受けるため,これら双方の変動を加味した適切な運用が課題であった.本研究では,実稼働プラントのデータを用いてケーススタディを行い,燃料デリバティブによるESCOメリットの安定化効果や運用における留意点について,ESCOメリットの構造的特性をふまえて定量的に論じた.ケーススタディにより,(1)燃料価格が想定より安価に推移した場合のいわゆる逆ざや現象について,設備償却費等の固定費を除く前の事業収益に対して4%から大きい事例では20%の逆ざやが生じる可能性があること,(2)逆ざやリスクを踏まえた適切な燃料デリバティブ導入量は,ESCO設備燃料消費量の5%〜50%程度と半分以下であることなどを確認し,実プラントの燃料固定化に適用した.

著者関連情報
© 2005 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top