日本歯科保存学雑誌
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原著
止血剤処置が象牙質とボンディング材接着に及ぼす影響
菅島 正栄岡田 英俊松渕 志帆佐々木 重夫中島 大誠川島 功浜田 節男
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キーワード: 止血剤, 象牙質接着, AFM観察
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2008 年 51 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

近年,接着技術の進歩により歯冠修復にレジンを応用する症例は多くなってきた.これまでの研究により歯面処理時において唾液や血液によって汚染されると,それらが接着阻害因子となり,接着強さは低下することが報告されている.実際の臨床において,止血剤は出血した部位に作用させた後,水洗,乾燥して除去する.しかし,止血剤自体が処理後の被着面に残存することによって,ボンディング材の歯質に対する接着強さに影響を及ぼすことが危惧された.そこで今回,さらにボスミン®(第一三共製薬)の歯面処理効果について確認するため,リン酸処理,希塩酸処理を行った象牙質表面を対照とし,原子間力顕微鏡(以下,AFMと略す)による象牙質の表層における構造変化の観察,そしてボスミン®の作用時間による接着強さの違いについて比較検討を行った.AFM観察した結果,実験群を無処理のものをコントロールとし,リン酸処理,希塩酸処理,およびボスミン®処理をそれぞれ比較すると,リン酸処理,希塩酸処理を行ったものは象牙質表層の凹面は少なくなり,より平坦な像が観察された.しかし,ボスミン®処理においては,15秒間処理では無処理のものと比較し,ほぼ均一な凹凸が測定面一面に観察された.1分間処理においては15秒間処理のものと比較すると微細な凹凸形が少ない像を示したが,無処理のものよりは凹凸を示す像が観察された.接着強さ試験において,対照であるリン酸処理群,希塩酸処理群は無処理群と比較し有意に低い値を示したが,一方,実験群であるボスミン®15秒間作用群,1分間作用群は無処理群と比較し有意に高い値を示した.以上のことから,ボスミン®には歯面処理効果があり,その結果接着を強めることが明らかとなった.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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