日本歯科保存学雑誌
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原著
ミニマルインターベンションに基づく修復法の臨床応用に関する実態調査
松下 美樹子畦森 雅子前田 英史坂井 貴子吉田 桐枝後藤 康治椛島 浩明赤峰 昭文
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2009 年 52 巻 6 号 p. 483-492

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抄録

2002年に世界歯科連盟(FDI)によって提唱された(FDI Policy Statement)Minimal intervention(MI)の概念に則った歯質保存的修復法(MI修復法)は,健全歯質の削除量を最小にすることにより歯質の脆弱化を回避し,歯の長寿化につながる治療法である.しかしMIの認知状況や臨床現場での応用状況等についての情報が少ないことから,本研究では,MI修復法の臨床応用の実態を把握することを目的として,九州大学病院歯科部門に所属する歯科医師133名に対し,MIに関するアンケート調査を行った.アンケート調査はまず初めに「MIというう蝕治療コンセプトを知っているか否か(MIの認知)」について質問し,次にMIを知っている回答者に対して「日常の臨床において生活歯・失活歯にMI修復法を使用するか否か(MI修復法の適用意向)」について質問した.その後すべての回答者に対し,2枚の症例写真(症例1:生活歯で遠心隣接面に限局したう蝕を有する下顎第二小臼歯,症例2:MODの実質欠損を有する根管充填直後の下顎第一大臼歯)に対し選択する修復法(実際の修復法の選択)およびその選択理由について調査した.その結果,「MIを知っている」と回答した歯科医師は87%(116名)であった.これらの回答者のなかで,「日常の臨床でMI修復法を適用する」と回答したのは,生活歯の場合は69%,失活歯の場合は27%であった.また,「MI修復法を選択する」と回答したのは,症例1において全回答者の59%,症例2において23%であった.さらに,失活歯における「MIの認知」と「実際の修復法の選択」間を除き,「MIの認知」および「MI修復法の適用意向」と「実際の修復法の選択」との間に正の相関関係(p<0.05)が認められた.MI修復法を選択しない主な理由は,生活歯の場合「従来法への慣れ」「二次う蝕の予防」および「保持力の確保」であり,失活歯の場合「歯・歯根の破折防止」および「保持力の確保」であった.これらの結果より,1)MI修復法の普及が失活歯において遅れていること,2)生活歯の場合,MIを認知しているほど,あるいはMI修復法の適用意向が強いほど,実際にMI修復法を適用する確率が大きくなっていたのに対し,失活歯の場合は,MIを認知しているにもかかわらず,MI修復法を選択する確率が非常に小さいことが明らかとなった.

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© 2009 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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