日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
ラット実験的根尖性歯周炎におけるBcl-2遺伝子の発現解析
山中 裕介金子 友厚吉羽 邦彦興地 隆史
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 54 巻 6 号 p. 368-374

詳細
抄録

Bcl-2(B-cell lymphoma 2 protein)は,血管新生およびアポトーシス関連タンパクとして知られているが,根尖性歯周炎の病変形成に果たす役割は不明である.そこで本研究では,ラット実験的根尖性歯周炎におけるBcl-2および関連タンパクであるBax (Bcl-2-associated X protein)のmRNA発現を経時的に検索した.実験には5週齢Wistar系雄性ラットの下顎第一臼歯を用い,露髄後14あるいは28日間開放のまま放置することにより根尖性歯周炎を誘発した.次いで,被験歯の根尖部歯周組織に対してCD31, Bcl-2およびBaxに対する免疫組織化学染色を施すとともに,免疫レーザーキャプチャーマイクロダイゼクション法にてCD31陽性血管内皮細胞およびその周囲のCD31陰性組織を採取し,おのおのにおけるBcl-2およびBax mRNAの発現をリアルタイムPCRで定量した.病変拡大期である14日経過例では,Bcl-2 mRNA発現は正常根尖部歯周組織および28日経過例と比較して有意に高く(p<0.05, Mann-Whitney U検定),また血管内皮細胞では周囲組織と比較して有意に高レベルであった(p<0.05, Paired t検定).一方,Bax mRNA発現には観察期間による有意差は認められなかった.以上より,ラット実験的根尖性歯周炎ではBcl-2が病変拡大期に血管内皮細胞で発現を亢進させることが明らかとなった.

著者関連情報
© 2011 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top