日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
エピガロカテキンガレートが破骨細胞形成に及ぼす影響
鵜飼 孝横山 美穂岸本 隆明吉永 泰周市村 育久押野 一志原 宜興
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 54 巻 6 号 p. 375-383

詳細
抄録

われわれはこれまでに,茶カテキンがマウスにおいて炎症性の歯槽骨吸収を抑制することを示してきた.茶カテキンは多種のカテキン類の複合物であり,その主成分はエピガロカテキンガレート(EGCG)である.EGCGは多様な生物学的活性を有しており,破骨細胞形成を抑制することも報告されている.しかし他のカテキン類と比較してその強さがどの程度のものなのかは不明である.またEGCGが破骨細胞形成にどのように影響を及ぼすのかは明らかになっていない.本研究の目的は,マウス骨髄マクロファージにmacrophage colony stimulating factor (M-CSF)存在下でreceptor activator of NFκB Ligand (RANKL)を添加することにより破骨細胞を形成させる系を用いて,破骨細胞形成に及ぼすカテキン類の影響を調べ,EGCGの影響の強さを検討すること,ならびに破骨細胞形成へのEGCGの作用を検討することである.まず骨髄マクロファージにRANKLと同時にカテキン類を添加し,72時間後の細胞の状態を確認した.次に前破骨細胞分化に及ぼすEGCGの影響を調べるためRANKLと同時にEGCGを添加し,48時間後の単核のTRAP陽性細胞の形成状態を確認した.また細胞にRANKL添加と同時または添加24, 48, 60時間後にEGCGを加え,RANKL添加72時間後の破骨細胞形成状態を確認した.さらに細胞をEGCGで24時間前処理後にEGCGを除去し,RANKL添加72時間後の破骨細胞形成状態を確認した.破骨細胞の同定には酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)染色を行い,3核以上の多核のTRAP陽性細胞を破骨細胞として評価した.その結果,RANKL添加72時間後には多くの破骨細胞が検出できたが,カテキン類添加により抑制された.EGCGはカテキン類のなかで,強い破骨細胞形成抑制作用を示すものの一つであった.EGCGはRANKL添加48時間後における破骨細胞前駆細胞から前破骨細胞への分化も強く抑制した.さらにEGCGはRANKLと同時ばかりでなく,RANKL添加24, 48, 60時間後に添加されても破骨細胞形成を抑制した.しかしEGCGの前処理はRANKL添加72時間後の破骨細胞形成に影響を及ぼさなかった.以上より,EGCGは破骨細胞形成抑制能が強いカテキン成分の一つであり,RANKL存在下での破骨細胞前駆細胞から前破骨細胞への分化ならびに成熟破骨細胞への分化を強く抑制することが示された.

著者関連情報
© 2011 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top