2013 年 56 巻 4 号 p. 335-343
目的:近年,Nd:YAGレーザーは歯石除去やポケット内照射において使用されている.歯周ポケットから骨まで近接していることが多いことから,われわれは組織深達性を有するNd:YAGレーザー照射の骨への影響を検討するために,マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を用いて,出力条件の違いによる影響を検討した.材料と方法:MC3T3E-1は,10%FBS含有α-MEM培地にて培養を行い,歯科用パルスNd:YAGレーザーにて照射を行った.照射条件を3群(非照射群,100mJ, 30pps, 10秒照射群および200mJ, 30pps, 10秒照射群)に分けて照射し,24時間培養を行った.細胞増殖率および細胞遊走能の測定,位相差顕微鏡による形態観察および走査電子顕微鏡(SEM)による細胞表面の観察について比較・検討を行った.結果:非照射群と比較して100mJ, 30pps, 10秒照射群において細胞数の有意な増加が認められ(p<0.001), 200mJ, 30pps, 10秒照射群では有意な減少が認められた(p<0.001).200mJ, 30pps, 10秒照射群は非照射群および100mJ, 30pps, 10秒照射群と比較し有意な細胞遊走能の低下が認められた(p<0.05).位相差顕微鏡による形態観察では,各群において顕著な差異は認められなかったが,SEMによる細胞表面の観察では200mJ, 30pps, 10秒照射群において細胞の圧平化が認められた.結論:今回の研究結果より,レーザー照射はMC3T3-E1に対し出力依存的に細胞の機能に影響を及ぼすことが示唆されたことから,臨床においてポケット内照射を行う際はレーザーの特性を十分に理解したうえで照射条件を選択することが重要であると示唆された.