日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
12~13歳と15~16歳の若年者における唾液中のStreptococcus mutansとStreptococcus sobrinusのPCRによる検出結果と齲蝕罹患率との関係
深谷 芽吏野村 義明桃井 保子
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 56 巻 6 号 p. 623-630

詳細
抄録

目的:われわれは,12歳以降の若年者に急増する齲蝕の発生を将来に向け抑制するには,中学・高校時代に行われる歯科健診において,各人の齲蝕リスクを評価しフィードバックすることが有効ではないかと考えた.そこで,これに科学的根拠を与える目的で,12〜13歳(中学1年生)と15〜16歳(高校1年生)の唾液を歯科健診時に採取し,唾液中の齲蝕原生細菌Streptococcus mutansとStreptococcus sobrinusの菌数をリアルタイムPCRで測定し,菌数レベルとDMFTとの関係を検討した.材料と方法:対象は,中学1年生262名と高校1年生334名の計596名とした.唾液中の齲蝕原性細菌数の測定は,口腔健康診断時に刺激唾液を採取し,リアルタイムPCRにて唾液1ml中のS. mutansとS. sobrinusの菌数を測定することで行った.歯科健診は歯科医師8名によって行われた.成績:12〜13歳グループ(262名)では,S. mutansが検出限界以下(<103cells/ml)の者は25.6%(67名)であった.一方,S. mutansが105cells/ml以上の者は17.9%(47名)であった.また,S. sobrinusが検出限界以下の者は94.7%(248名)で,105cells/ml以上の者は1.1%(3名)であった.15〜16歳グループ(334名)では,S. mutansが検出限界以下の者は23.4%(78名)であった.一方,S. mutansが105cells/ml以上の者は20.7%(69名)であった.また,S. sobrinusが検出限界以下の者は90.1%(301名)で,105cells/ml以上の者は1.8%(6名)であった.DMFTの平均値は,12〜13歳グループにおいては0.9,15〜16歳グループにおいては1.8であった.また,両菌種とDMFTとの関係では,すべての対象者においてS. mutansのみを保有する群と,両菌種をともに保有しない群との間に,統計的に有意差(p<0.05)が認められた.結論:12〜13歳と15〜16歳の唾液中のS. mutansとS. sobrinusの菌数レベルとDMFTとの関係を検討したところ,すべての対象者においてS. mutansのみを保有する群のDMFTは,両菌種を保有しない群のDMFTより有意に高かった.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top