日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
歯の破折症例の現状ならびに課題
—歯内療法専門外来初診患者にみる現在の歯科臨床のニーズ—
和達 礼子吉岡 俊彦花田 隆周原田 直子海老原 新須田 英明
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 58 巻 1 号 p. 1-9

詳細
抄録

 目的 : 歯科治療の大多数は一般歯科医院にて行われているが, 経過不良症例は高次歯科医療機関で対応することがある. これらの症例を分析することにより, 一般歯科医師ならびに患者が解決に苦慮している問題点が明らかになると推測される. 一方, 近年歯の喪失の原因として歯の破折が増加していることが指摘されているが, わが国での具体的な調査は少ない. 本研究の目的は, 大学病院の歯内療法専門外来の初診患者のうち, 主訴が歯の破折にかかわる症例を調査することにより, 現在の歯科臨床の現状ならびに問題点を明らかにすることである.
 対象と方法 : 対象は, 平成23年6月中の22日間に東京医科歯科大学歯学部附属病院むし歯外来の歯内療法専門外来を受診した初診患者とした. 主訴の患歯について, 受診後に歯科診療録ならびにデンタルX線写真を参照し調査を行った.
 結果 : 歯内療法専門外来における当該月間の初診患者数は計462人であり, 主訴が歯の破折であった者は118人 (25.5%) であった. このうち, 破折線が確認された症例は44人 (37.3%), 破折線は確認されなかったがほかの所見から歯の破折が疑われた症例は74人 (62.7%) であった. 受診経緯は, ①他歯科医院を受診せず患者の意思で直接本院を受診した者が134人 (29.0%), ②他歯科医院からの依頼状を持参し本院を受診した者は111人 (24.0%), ③他歯科医院を受診するも症状が改善せず, 担当歯科医師の了承を得ずに依頼状を持参せず患者の意思で本院に転院した者は76人 (16.5%), ④他歯科医院での診断・治療方針について, 担当歯科医師以外の意見を求める, すなわちいわゆるセカンドオピニオンを希望し本院に転院した者は55人 (11.9%), ⑤本院の他診療科の担当歯科医師からの依頼状を持参し受診した者は86人 (18.6%) であった. 受診経緯①~⑤の各群における破折症例の割合は, ①が20人 (14.9%), ②は25人 (22.5%), ③は26人 (34.2%), ④は25人 (45.5%), ⑤は21人 (24.4%) であった.
 結論 : 本研究により, 歯の破折症例について以下のことが明らかになった. 1. 歯内療法専門外来に対する需要が高い. 2. 一般歯科医師に診断法を普及させる必要がある. 3. 客観的な確定診断法の確立が求められる. 4. 患者に歯の喪失原因になりうるという知識を普及させる必要がある.

著者関連情報
© 2015 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
次の記事
feedback
Top