日本歯科保存学雑誌
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原著
S-PRGフィラー抽出液の人工脱灰象牙質に対する象牙細管封鎖効果
韓 臨麟興地 隆史
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2015 年 58 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

 目的 : Surface pre-reacted glassionomer filler (S-PRGフィラー) は各種イオン徐放能を有する生体機能性材料であり, 同フィラー水中懸濁液の上清 (S-PRGフィラー抽出液) は, リン酸緩衝生理食塩水 (PBS) や人工唾液 (AS) との混和により沈殿生成を示すことが知られている. 本研究は, この性質に着目し, 人工脱灰牛歯の象牙質に対するS-PRGフィラー抽出液の象牙細管封鎖効果の検討を目的とした.
 材料と方法 : S-PRGフィラー抽出液 (固形物非含有, SF0) およびS-PRGフィラー50%含有スラリー材 (SF50) を実験材料として用い, これらをPBSあるいはASと混和後, 上清については高周波誘導結合プラズマ発光分析法, 析出物については波長分散型電子線マイクロアナライザー (EPMA) により元素分析を行った. また, 析出物結晶相をX線回折法 (XRD) で定性解析した. さらに, 牛歯歯根部象牙質試片に10%リン酸処理 (10秒) とヒドロキシアパタイト含有ペーストによる研磨を行って人工知覚過敏症象牙質を作製後, ここにSF0あるいはSF50, 次いでPBSあるいはASを塗布し, 走査電子顕微鏡による形態観察を行った.
 結果 : SF0とPBSとの混合上清では, Na, B, P, F, Sr, Si, Alが, SF0とASとの混合上清からは, これらに加えてCaが検出された. また, 析出物からはS-PRGフィラー抽出液に由来する元素 (Na, Sr, Si, Al, B, F) およびPBSやASに由来する元素 (P, Na, Ca) が検出された. XRDによる分析では, SF0とPBSとの混和後はNaClが, またSF0とASとを混和した場合はNa3H2P3O10・1.5H2Oが同定された. さらに, S-PRGフィラー抽出液 (SF0もしくはSF50), 次いでPBSまたはASで処理された人工知覚過敏症象牙質表層では, 象牙細管開口部や管間象牙質への不溶性析出物の沈着が生じることが確認された. 析出物の形成はSF50とASとの組合せで最も顕著に生じた.
 結論 : S-PRGフィラー抽出液とPBSあるいはASとの二段階処理が, 人工知覚過敏症象牙質に対して象牙細管封鎖能を示すことが確認された.

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