日本歯科保存学雑誌
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原著
ワンステップボンディング材の歯質脱灰能に関する研究
藤田 光岩井 仁寿岩井 啓寿岡田 珠美鈴木 英明内山 敏一西山 典宏平山 聡司
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2015 年 58 巻 4 号 p. 273-281

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抄録

 目的 : ワンステップボンディング材であるG-BOND PLUS (G-BP) に配合されている酸性モノマーについて, G-BPとエナメル質または象牙質粉末とを反応させ, 反応前後における溶液と固体13C NMRスペクトルの変化から, エナメル質と象牙質の脱灰によって生成される副生成物の情報を得るために, 反応時間を変化させて酸性モノマーと歯質成分との相互作用の詳細について検討した. さらに, 酸性モノマーの脱灰がエナメル質と象牙質の接着強さに及ぼす影響を検討した.
 材料と方法 : G-BP 1.000g中に切削したウシ前歯歯冠エナメル質または象牙質粉末0.200gをそれぞれ10, 20, 60, 1,800秒間および3,600秒間振盪・攪拌した. その後, 懸濁液を遠心分離し, G-BP上澄み液と反応残渣の13C NMRスペクトルとを, EX 270スペクトロメーターを用いて測定した. エナメル質または象牙質粉末を相互作用させる前後の13C NMRスペクトルを基に, TEGDMAのビニル基メチレンカーボンNMRピークに対するG-BPに含有される酸性モノマー (MDP) のビニル基メチレンカーボンNMRピークの強度比を求めた. MDPのビニル基メチレンカーボンNMRピーク強度の減少率は, 反応前後の強度比の差を反応前の強度比で除して求め, これをMDPの歯質アパタイト成分の脱灰率とした. さらに, G-BPのエナメル質と象牙質に対するせん断接着強さを測定した.
 結果 : G-BPにエナメル質と象牙質を相互作用させると, MDPのビニル基メチレンに帰属されるNMRピークの相対強度は減少し, 脱灰率は反応3,600秒後でエナメル質は66.50%, 象牙質では89.50%であった. G-BPと歯質アパタイトの反応残渣からカルシウム塩の析出が認められた. G-BPとの反応時間が長くなると, MDP-Ca塩が増加し, NMRピーク “g1” からNMRピーク “g2” の相対的な強度比が大きくなった. MDPの脱灰による接着強さへの影響は, 反応時間20秒までは脱灰率は増加し, それに対する接着強さもわずかに増加したが, 反応時間60秒後の接着強さはエナメル質が15.53MPa, 象牙質が10.39MPaであった.
 結論 : G-BPに配合されるMDPと歯質アパタイトの脱灰率は, 象牙質でエナメル質より高い脱灰率を示した. 接着強さでは象牙質よりもエナメル質で高い接着強さを示した.

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