日本歯科保存学雑誌
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原著
歯髄幹細胞および歯髄組織のCD146 mRNA発現に対するlipopolysaccharide刺激の影響
末山 有希子金子 友厚伊藤 崇史興地 隆史
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2015 年 58 巻 4 号 p. 282-289

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抄録

 目的 : 炎症性刺激が幹細胞の動態や遺伝子発現に及ぼす影響については, 依然として不明な点が多い. そこで本研究では, 幹細胞分化能マーカーの一つとして知られるCD146に着目し, ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞およびラット骨髄間葉系幹細胞のCD146 mRNA発現に対するlipopolysaccharide (LPS) 刺激の影響をin vitroで検討した. さらに, LPSにより歯髄炎を誘発したラット切歯歯髄組織を検索対象として, in vivoにおけるCD146 mRNA発現レベルを併せて解析した.
 材料と方法 : ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞およびラット骨髄間葉系幹細胞を播種後, LPS (最終濃度 : 10ng/ml) もしくはコントロールとして生理食塩液を培養液に滴下し, 3, 12時間あるいは24時間培養した. 所定時間経過後, 各培養幹細胞から全RNAを抽出したのち, CD146 mRNAの発現をreverse transcription polymerase chain reaction (RT-PCR) 法により半定量的に解析した. また, Wistar系雄性ラットに全身麻酔を施した後, 下顎切歯歯冠を水平方向に切断し, Kファイルにて歯髄腔内に5mm穿掘形成したのち, LPS (1mg/ml) を1μl貼付し, 窩洞を封鎖した. LPS刺激3, 12, 24時間経過後に切歯歯髄を摘出し, 前述と同様に全RNAを抽出後, RT-PCRを用いてCD146 mRNAの発現解析を実施した.
 成績 : ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞において, LPS刺激12, 24時間経過後にCD146 mRNA発現の有意な亢進が観察された. また, ラット骨髄間葉系幹細胞ではLPS刺激24時間経過後にCD146 mRNA発現の有意な亢進が観察された. さらにラット切歯歯髄組織においては, LPS刺激3時間経過後にCD146 mRNA発現の有意な亢進が観察された.
 結論 : LPS刺激により, ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞, ラット骨髄間葉系幹細胞およびラット切歯歯髄組織にCD146 mRNAの有意な発現亢進が認められた.

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