日本歯科保存学雑誌
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原著
Er : YAGレーザー照射象牙質におけるレジン添加型グラスアイオノマーセメントの接着性に及ぼすカルボン酸と金属塩の合剤による歯面処理の影響
鶴田 あゆみ掘江 卓堅田 和穂岸本 崇史長塚 由香八谷 文貴鈴木 未来冨士谷 盛興千田 彰
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2015 年 58 巻 5 号 p. 363-372

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抄録

 目的 : Er : YAGレーザー照射した象牙質において, レジン接着システムとしてのレジン添加型グラスアイオノマーセメント (RMGI) は, レジン系ボンディング材に比し安定した接着性を示すが, 接着強さの測定値は低いことを著者らは明らかにした. 本研究は, Er : YAGレーザー照射象牙質に対し良好な接着性を示す接着システムの開発を目指し, レーザー照射により生じた変性層を強化しRMGIの接着強さの向上を図る目的で, カルボン酸と金属塩の合剤による歯面処理効果について検討した.
 材料と方法 : 新鮮抜去ウシ前歯に調製した象牙質平坦面を, Er : YAGレーザーにより低出力照射 (50mJ/1pps) あるいはフィニッシング照射 (50mJ/1pps照射後150mJ/1ppsで仕上げ照射) した. 次いで, これら照射面ならびに非照射面に20%ポリアクリル酸+3%塩化アルミニウム水溶液 (Al), あるいは10%クエン酸+2%塩化第二鉄水溶液 (Fe) による歯面処理を施し, Fuji Lining Bond LCを塗布後Clearfil AP-Xを塡塞し, 微小引張接着強さを検討した (Schefféの検定, α=0.05). また, 破壊形態 (実体顕微鏡) および接合界面の様相 (SEM) も検討した.
 結果 : 非照射象牙質では, 歯面処理剤を併用しなかった場合の接着強さは約12MPa, AlあるいはFeを用いた場合の接着強さはいずれも約24MPaであり, 歯面処理剤を併用しなかったものに比し有意に高い値を示した. 一方, レーザー照射象牙質において歯面処理剤を併用しなかったものは接着強さの計測が不可能であった. また, Alの場合の接着強さは5~6MPa, Feのそれは10~13MPaであり, Feのほうが効果的であった. Feをレーザー照射象牙質に用いたときの破壊形態は, 界面破壊ならびに変性層からRMGIにわたる混合破壊がAlの場合より多く認められた. このことは, レジンの重合収縮や外力などの応力がFeにより強化された変性層とRMGI層の両層に集中し, その結果生じた歪みが両層に限局したことが接着強さの向上に繋がったものと考えられた.
 結論 : Er : YAGレーザー照射された象牙質に対しては, 10%クエン酸+2%塩化第二鉄水溶液による歯面処理が, レジン接着システムとしてのRMGI系レジン接着システムの接着性向上に効果的であることが判明した.

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© 2015 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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