日本歯科保存学雑誌
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原著
根管充塡材の効率的な除去に関する研究
大槻 和正吉田 拓正神田 亘湯本 琴美山口 貴央山崎 泰志細矢 哲康
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キーワード: 根管充塡材, 再根管治療, GPR
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2015 年 58 巻 6 号 p. 496-502

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抄録

 目的 : 根管治療の最終処置である根管充塡は, ガッタパーチャポイントと種々の根管シーラーを併用した方法が一般的であるが, 再治療の際にはこれらの根管充塡材を完全に除去する必要がある. そしてそのためには, 専用の器具をはじめ根管切削器具や超音波チップなどが応用されている. 本研究の目的は, 種々の器具を用いて根管充塡材を除去する際の所要時間ならびに除去率を調査し, 効率的な除去方法を検索することである.
 材料と方法 : 被験器具は, ガッタパーチャポイントの除去を目的としたGPR (2S, マニー), Ni-TiロータリーファイルのReciproc (R50, VDW, Germany) ならびに根管内異物除去用の超音波チップ (ST21, 長田電機工業) である. 30本の透明根管模型 (S1-U1, ニッシン) の根管上部をロート状拡大し, 作業長18mmで根管拡大形成 (#60/04) を行った後, シングルポイント法にてガッタパーチャポイント (#60/04) と根管シーラーの併用根管充塡を行った. 根管充塡の状態を4方向からの規格写真撮影によって記録し, 根管充塡モデルは37°C, 相対湿度100%で1週間以上保管した. 根管充塡モデルをマスキングした後, 無作為に10モデルずつ3群に分配した. 根尖部付近の根管充塡材の除去は手用根管切削器具で行うという手法に準じて, 根管充塡材除去の作業長は16mmとし, 2名の術者が各被験器具を用いて各群5モデルずつ根管充塡材の除去を行った. なお#50 Kファイルが作業長までスムーズに挿入できる状態を除去完了とした. 除去に要した時間を計測するとともに, 根管充塡の状態を記録した写真撮影と同様に, マスキングを除去した後に根管充塡モデルを4方向から規格撮影した. 画像解析ソフト (ImageJ, National Institutes of Health, USA) を用いて根管壁に残存した根管充塡材の面積を計測し, 4方向からの画像における除去率の平均値を各モデルにおける除去率とした. 各被験器具間において, 根管充塡材の除去に要した時間ならびに除去率に対し, 平均値の差の検定法と二元配置分散分析ならびにScheffé’s F testを用いて統計学的検討を行った.
 成績 : 根管充塡材の除去に要した平均時間は, GPRは49.6秒で最も短く, Reciprocは340.3秒, ST21は402.4秒であった. GPRとReciprocおよびST21間には統計学的有意差が認められ, ReciprocとST21間には有意差は認められなかった. 平均除去率はGPRが68.1%で最も高く, Reciprocは63.3%, ST21は59.6%であったが各器具間に有意差は認められなかった.
 結論 : 本研究の結果から, 根管充塡材を除去するためにはGPRの使用が効率的であることが示唆された.

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