日本歯科保存学雑誌
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原著
Er : YAGレーザー照射法に関する研究
—チップ損耗性についての検討—
廣田 陽平岩田 有弘横田 啓太吉川 一志山本 一世
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2016 年 59 巻 1 号 p. 47-57

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抄録

 目的 : 歯の硬組織切削では, Er : YAGレーザーは特に優れた効果を示し, 臨床応用されているが, 高速回転切削器具と比較し除去効率では到底及ばず, 治療時間の延長などが問題となっている. われわれの研究グループは切削効率を向上させるため, 注水機構を霧状に改良した試作チップを作製し, 実験を重ねてきた. 今回この試作チップが製品化され, CS600Fとして発売された. 本研究はCS600Fを用いてレーザー照射を行い, ヒト象牙質に対する切削体積量, チップ先端損耗体積, チップ先端損耗率および先端出力への影響について検討した.
 材料と方法 : 被験歯として健全ヒト大臼歯を用い, 象牙質までモデルトリマーにて面出しを行い, 耐水研磨紙にて#2000まで研磨を行った後, 0.5mm/sでムービングステージを移動させながら4×4mmの範囲に均一にレーザー照射を10回行った. レーザー照射は試料までの距離を0.5, 1.0mmおよび2.0mmに規定した. C600Fにてレーザー照射を行った群をコントロール群, CS600Fにてレーザー照射を行った群を霧状噴霧群とした. 各試料および各照射チップをレーザーマイクロスコープにて観察し, 象牙質切削体積量およびチップ先端損耗体積量を計測し, チップ先端損耗率を算出した (n=3). また, 照射後の先端出力を計測し, 照射前に規定した先端出力と比較した.
 成績 : 象牙質切削体積量およびチップ先端損耗率ではすべての条件でコントロール群と比べ霧状噴霧群が有意に高い値を示し, チップ先端損耗体積および先端出力ではコントロール群と霧状噴霧群間で有意な差は認められなかった (p=0.05).
 結論 : 象牙質切削において, 霧状噴霧注水は, チップの損耗状態は変わらずに象牙質切削体積量を向上させることが示唆された. また, 従来の注水機構と霧状噴霧注水ともに, 10回照射後も先端出力の変化は認められなかった.

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© 2016 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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