日本歯科保存学雑誌
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原著
過酸化水素濃度と活性化時間がヒドロキシラジカル発生と漂白におよぼす影響
黒川 千尋東光 照夫玉崗 慶鐘小川 弘美小林 幹宏吉川 和子田中 智久真鍋 厚史
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2018 年 61 巻 2 号 p. 104-112

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抄録

 目的 : 歯の漂白は臨床診療で広く使用されている. 歯の漂白メカニズムは, 「過酸化水素から発生するヒドロキシルラジカルが, 有色二重結合分子を分解し無色分子にとする」 とされている. 本研究の目的は, この漂白メカニズムを明らかにするため, 過酸化水素の濃度および活性化時間を変化させ, ヒドロキシルラジカル発生量と漂白効果を検討することである.

 材料と方法 : 濃度3, 10, 20%と30%の過酸化水素水とスピントラッピング剤 (5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide (DMPO) ) とを混合し, ESR (Electro Spin Resonance) 法によりヒドロキシラジカル発生量を検討した. 過酸化水素の活性化は, 波長440nmのハロゲン光源を使用し0.5, 1, 2, 3, 5, 10分の照射時間で行った. 漂白効果の検討は, β-カロテンで染色した沪紙を3, 10, 20, 30%過酸化水素水に浸漬し, 0.5, 2, 10分間照射し, 漂白前後のCIELab値から色差ΔE*abを算出した. 色差値が大きいほど漂白効果が高いと判定した.

 結果 : ヒドロキシルラジカルの生成は, 過酸化水素の濃度が高く照射時間が長いと増加した. ΔE値はヒドロキシラジカル発生量と同様の傾向を示した. すなわち, ΔE*abは, 高い濃度, 長い活性化時間であるほど増加した.

 結論 : 過酸化水素の濃度および活性化時間は, 過酸化水素ラジカルの生成において重要な役割を果たした. 触媒の存在, 温度および漂白剤の物理的特性を含む要因に加え, ヒドロキシルラジカル量と色差値ΔE*ab値は, 歯の漂白効果と関連していた. 効果的かつ安全な歯の漂白剤を開発するには, 過酸化水素の濃度および活性化時間のみならず, ほかの要因も考慮する必要があると考えられた.

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© 2018 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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