日本歯科保存学雑誌
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症例報告
大臼歯部1歯欠損症例にフロアブルコンポジットレジンのみを用いた単純化した術式によりダイレクトブリッジ修復を行った1症例
保坂 啓一田代 浩史高橋 真広岸川 隆蔵中島 正俊大槻 昌幸田上 順次
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2019 年 62 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

 目的 : 接着歯学の発展に伴い, Minimal Intervention Dentistryのコンセプトに基づく歯質接着システムとコンポジットレジンを用いた直接法接着修復治療は, 臨床的有効性と経済的効率性の観点から, 典型的な窩洞のみならず, 空隙歯列の空隙閉鎖, 歯冠形態の改善, 前歯部少数歯欠損補綴までさまざまな症例に多く用いられている. 少数歯欠損補綴に関しては, コンポジットレジンのみで修復する方法は強度が不足することから, より高い強度と破折抵抗性を求めて, ファイバー繊維がしばしば併用されてきた. しかし術式は単純ではなく, 高度な技術が必要である. 近年, 接着性レジンの接着性能やフロアブルコンポジットレジンの物性が向上したことから, 術式がシンプルなコンポジットレジンのみの修復が改めて見直されている. しかし, その報告はあまり多くない. 今回, 大臼歯部1歯欠損補綴に対して最新の接着システムとフロアブルコンポジットレジンのみを用いたダイレクトブリッジ修復を行い, これまでのところ良好な結果を得ているので報告する.

 症例 : 29歳女性. 下顎左側第一大臼歯は歯根破折の診断により抜歯された. 欠損隣接歯には全周に2, 3mm程度のポケットが観察されたのみで, 全顎的な歯周炎はなく, すべての歯に病的な動揺は認められなかった. また, 矯正歯科治療後の患者で咬合に問題は認められなかった. あらかじめ, 作業用模型上欠損部にポンティックのワックスアップを行い, ポンティック部の咬合面・基底面のシリコンコアを作成した. 2018年2月, 欠損側エナメル質には, リン酸ジェルを用いて酸処理を行った後, ツーステップセルフエッチングシステムを用いてメーカー指示どおり歯面処理を行い, フロアブルコンポジットレジンのみを用いて積層充塡を行いながらダイレクトブリッジ構造を構築した. 咬合調整および形態修正研磨を行い, 1週間後に予後を確認した.

 結果 : 9カ月経過後の時点においても, 良好な予後が確認されている.

 結論 : 本症例では, フロアブルコンポジットレジンのみを用いた直接法修復によって大臼歯部1歯欠損補綴治療を完了し良好な予後を得た. ファイバー繊維による補強構造を必要とせず, フロアブルコンポジットレジンのみの修復により良好な予後が得られたことから, 単純化された術式によるダイレクトブリッジ修復の臨床応用が今後期待される.

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