日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
乾燥が成形修復材料の質量および曲げ強度に及ぼす影響
澁谷 和彦大原 直子入江 正郎小野 瀬里奈松崎 久美子松本 卓也𠮷山 昌宏
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 63 巻 2 号 p. 199-206

詳細
抄録

 目的 : 超高齢社会に入り口腔乾燥症を有する患者が増加しているが, その口腔内環境を想定した条件での保存修復治療の研究はまだ少ない. 口腔乾燥症における口腔内ではさまざまな温度変化や湿度変化, 咬合力による負荷が修復材料に影響を与えることが予想される. そこで本研究は, 口腔乾燥症の口腔内における修復材料の基礎的評価の一端として, 水中浸漬と乾燥が成形修復材料の質量と曲げ強度に及ぼす影響を検討した.

 材料と方法 : コンポジットレジンとしてGRACEFIL ZeroFlo A3 (GFZ, ジーシー), レジン添加型グラスアイオノマーセメントとしてFuji ⅡLC Capsule A3 (ⅡLC, ジーシー), 従来型グラスアイオノマーセメントとしてFUJI Ⅸ GP EXTRA CAPSULE A3 (FⅨ, ジーシー) の3種類の成形修復材料を使用した. 吸水と乾燥が試料の質量に与える影響の検討のため, 7日間の水中浸漬と24時間空気中保管による試料の質量変化を経時的に測定した. 曲げ強度の測定では, 作製直後の試料をコントロール群 (以下, CL) とし, 7日間37°C水中保管群 (以下, WC), 7日間37°C空気中保管群 (以下, DC), 7日間流動パラフィン内保管群 (以下, LP) の4群にて3点曲げ試験を行った. 得られた結果は, 一元配置分散分析およびTukey HSD法により有意水準5%で統計処理を行った.

 結果 : 水中浸漬による質量増加はⅡLCが最も高い値を示し, 次いでFⅨが高く, GFZは最も低い値を示した. 乾燥によりいずれの群も約4時間後まで質量が減少し, 約6時間後には質量は一定となった. CLの曲げ強度については, GFZが有意に最も高い値を示し, 次いでⅡLCとなり, FⅨが最も低い値を示した. GFZはいずれの保管条件でもCLとの有意差は認めなかった. ⅡLCはCLと比較しWCで有意に低下し, DCで有意に増加した. FⅨはいずれの保管条件でもCLと比較して増加傾向を示し, DCで有意に増加した.

 結論 : GFZは吸水と乾燥の影響を最も受けず安定していた. ⅡLCは吸水量が最も高く, 吸水により曲げ強度は低下したが, 乾燥により大きな増加を認めた. FⅨの吸水・乾燥による質量変化はGFZとⅡLCの中間的な挙動を示した. FⅨの曲げ強度は乾燥により増加した.

著者関連情報
© 2020 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top