日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
歯科大学生101名の血圧とう蝕未処置歯数,歯周ポケット深さおよびBody Mass Indexとの関連について:入学時および4年時の追跡調査
佐故 竜介出分 菜々衣田口 明尾﨑 友輝窪川 恵太吉成 伸夫
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 65 巻 2 号 p. 164-173

詳細
抄録

 目的:高血圧症は脳心血管病の最大の危険因子であり,血圧と歯周病との関連は以前より報告されている.本研究では,松本歯科大学歯学部学生の1年時および4年時に実施された健康診断および歯科検診の結果から,血圧と口腔因子との関連について明らかにし,さらに3年間の口腔因子および全身因子の変化について検討することを目的とした.

 方法:対象は,松本歯科大学歯学部学生:101名(男性:54名,女性:47名,1年時の平均年齢:20.3±2.7歳)であり,1年時および4年時に検査を施行した.健康診断にて,全身疾患の有無,身長,体重,Body Mass Index(BMI),血圧(収縮期血圧:mmHg/拡張期血圧:mmHg)を調べ,歯科検診にて,現在歯数,未処置歯数,処置歯数,欠損歯数,DMFT指数,Community Periodontal Index(CPI)を調べた.血圧値分類は,①正常血圧(収縮期血圧:120mmHg未満かつ拡張期血圧:80mmHg未満)/正常高値血圧(収縮期血圧:120~129mmHgかつ拡張期血圧:80mmHg未満)群および②高値血圧(収縮期血圧:130~139mmHgかつ/または拡張期血圧:80~89mmHg)/高血圧(収縮期血圧:140mmHg以上かつ/または拡張期血圧:90mmHg以上)群の2群に分けた.また,CPIの結果から,Probing pocket depth(PPD)およびClinical attachment level(CAL)は4mm未満および4mm以上の2群に分けた.統計解析については,1年時および4年時それぞれにおける,血圧と口腔状態および全身状態についてt検定およびカイ2乗検定を用いて分析した.さらに,1年時と4年時それぞれについて,二項ロジスティック回帰分析を用いて,血圧と関連する口腔因子および全身因子を分析した.最後に,多項ロジスティック回帰分析を用いて,3年後の血圧値が「変化なし群 vs. 改善群」および「変化なし群 vs. 悪化群」を比較し,関連する口腔因子および全身因子について解析した.

 結果:血圧値分類が高値血圧以上の者では,1年時では未処置歯数が有意に多く,オッズ比:1.339倍(95%信頼区間:1.102~1.627,p=0.003),4年時ではPPD 4mm以上が多い傾向にあり,オッズ比3.882倍(95%信頼区間:0.863~17.453,p=0.077)であった.また,3年間で血圧が悪化した者では,BMIが増加しており,オッズ比:1.711倍(95%信頼区間:1.129~2.592)であった.よって,高値血圧以上では,口腔内の状況やBMIと関連することが示唆された.

 結論:高値血圧以上の者では,未治療のう蝕残存数と関連がみられた.また,3年間で血圧が悪化した者はBMIが増加していた.

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
前の記事 次の記事
feedback
Top