1993 年 56 巻 6 号 p. 475-485
促進老化を示す SAM-P8//Odu(P系)とその対照である SAM-R1/Odu(R系)の 7、17、27 および 37 週齢の唾液腺(顎下腺、舌下腺)から N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAGase)を抽出し、その活性発現、酵素学的性状およびアイソザイムパターンの変化から、P 系唾液腺における老化現象の特徴を追究した。唾液腺 NAGase 活性は、R 系の顎下腺では 17 週齢まで、舌下腺では 27 週齢まで増大したのち、以後一定値を係留した。P 系では両唾液腺の活性とも 17 週齢まで増大し、 27 週齢で低下、37 週齢で再び増大した。両唾液腺の NAGase 活性に及ぼす pH、各種化合物添加および熱効果は、R 系と P 系とでは異なった加齢変化を示した。NAGase を等電点分画すると、R 系の両唾液腺は 4 個(a, b, c および d)のピークに分離されたが、P 系では両唾液腺とも酸性域のピーク b が消失して、活性分布率はピーク a に集約した。
以上の所見より、P 系では両唾液腺の NAGase 活性とも 27 週齢で促進老化に伴う量的・質的変動をきたしていることが明らかになった。また、その変動には、酸性域で活性を示すアイソザイムが密接に関与していることが示唆された。