歯科医学
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歯周ポケットにおける病原酵素産生菌の分布
中垣 直毅
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1993 年 56 巻 6 号 p. 497-508

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抄録

 歯周ポケットの組織破壊進展メカニズムのうち、急性発作時におけるポケット内細菌の直接的病原因子を明らかにするために、急性発作部位と非発作部位から細菌を分離し、酵素および粘性物質産生性を検索するとともに、その産生菌を同定した。
 その結果、非発作部位においては collagenase および DNase 産生菌の比率が高く、平均値はそれぞれ 22.0%、および 18.4% であった。しかし、β-lactamase(5.7%)と trypsin(5.1%)を除く他の酵素産生菌の比率は、いずれも 5% 以下であった。一方、急性発作部位においても collagenase および DNase の産生菌の比率は高く、それぞれ 30.4% および 22.6% であった。加えて、trypsin 産生菌の比率は 17.6% を示した。しかし、他の酵素産生菌の比率はいずれも 5% 以下であり、collagenase、DNase および trypsin 産生菌が急性化に大きな影響を及ぼしていると考えられる。
 酵素産生菌を同定した結果、非発作部位での collagenase 産生における優勢菌は "milleri" group streptcocci(16.0%)であり、ほかにも PrevotellaLactobacillusFusobacterium および Veillonella などが collagenase を産生することが示された。一方、急性発作部位での collagenase 産生においては、P. gingivalis が優勢であり、53.7% を占め、ついで Fusobacterium、"milleri" group streptococci の順であった。DNase 産生菌としては、非発作部位では "milleri" group streptococci がもっとも優勢であり、ついで P. intermediaLactobacillusActinomyces が上位にランクされた。一方、急性発作部位では P. gingivalis が 60.0% を占めた。Trypsin 産生菌として、非発作部位では P. gingivalis が 42.0% を占め優位であっだが、急性発作部位では 91.3% であった。
 以上の結果から、いずれの酵素とも急性発作部位では P. gingivalis が主役を演じており、宿主側の防御要因が減弱したとき、なんらかの原因で P. gingivalis が選択的に増殖し、病原的に働くと考えられる。

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© 1993 大阪歯科学会
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