歯科医学
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ラット頭蓋・上顎骨の実験的成長抑制が下顎骨におよぼす影響について
中村 裕
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1993 年 56 巻 6 号 p. 509-523

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抄録

 成長期ラット片側の頭蓋・上顎骨の成長抑制が下顎骨におよぼす影響について形態計測的に検索した。
 実験動物には、5 日齢(体重 12~15 g)の Wistar 系ラット 90 匹を用いた。エーテル吸入麻酔下にてラット頭部皮膚に正中切開を施し骨膜上で剥離したのち、片側の矢状方向の成長抑制を与えるために、あらかじめラット頭部の形態に合わせて扇形に屈曲した 0.016 × 0.016 インチ(0.41 × 0.41 mm)の矯正線を左側の眼窩下裂と後頭骨間に固定し、皮膚縫合を行った。14、28 および 42 日齢の実験動物をそれぞれ麻酔下で断頭して乾燥頭蓋骨を作製し、軟エックス線装置にて頭頂方向エックス線規格写真および左右下顎骨の側方方向エックス線写真を撮影し、パーソナルコンピュータを用いて分析した。さらに、側方方向エックス線写真上に投影された左右下顎骨の面積および左右乾燥下顎骨の重量を計測した。その結果、実験群は対照群と比較して、 1) 体重の差は認められなかった。 2) 手術側の左側下顎骨の長径は減少したが、高径には変化を認めなかった。 3) 非手術側の右側下顎骨の長径には変化を認めなかったが、高径は減少した。 4) 側方方向エックス線写真上に投影された下顎骨の面積は、左右ともに減少したが、左右差はなかった。 5) 乾燥下顎骨の重量は、左右ともに減少したが、左右差はなかった。
 以上の結果から、成長期ラット片側の上顎骨-後頭骨間に加えた持続的な圧迫性外力は下顎骨を含めた頭蓋・顎顔面の非対称を生じさせることが判明した。さらに下顎骨の非対称は、下顎骨の成長の量的な抑制と方向の転換との組み合わせにより、生じることが示唆された。

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© 1993 大阪歯科学会
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