歯科医学
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チタン系補綴物のYAGレーザによる表面窒化法の特徴
額田 和門
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1995 年 58 巻 1 号 p. 31-43

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抄録

純チタンは補綴物としての機械的性質が十分とはいえず, 鋳造時には, 反応層が形成される. その対応に, YAGレーザによる表面窒化を試みて, 窒化層の形成を確認した.
 一方, イオンプレーティングや窒素雰囲気でのファーネス加熱による表面改質方法が補綴物に応用され始めているので, レーザ窒化法とこれらの窒化法を比較検討した.
 実験には, 純チタン圧延板と純チタン鋳造体ならびにそれぞれの窒化した試料を用いた. レーザ窒化は, 連続発振YAGレーザ加工機を用いて, 窒素雰囲気下で行った. イオンプレーティングおよびファーネス加熱窒化は, それぞれ専門業者に, 補綴物に行われている条件で依頼した. そして, 以下の結果を得た.
 X線回折法による結晶構造解析によって, レーザ窒化とイオンプレーティングではTiNが, ファーネス加熱窒化ではTi2Nが同定でき, 窒化物の生成が確認された. 表面の電子顕微鏡観察で, レーザ窒化には平坦な部分と粗な部分がみられたが, イオンプレーティングとファーネス加熱窒化は非窒化試料とほぼ同様であった. 表面あらさの測定では, レーザ窒化が最も粗く, イオンプレーティングとファーネス加熱窒化では窒化による変化はなかった. 金属組織観察および窒化層の厚さ測定では, レーザ窒化では, 100μm以上のTiN層, TiN-Ti混合溶融部, 熱影響層および母材結晶粒がみられ, イオンプレーティングでは, 1.3μmのTiN層と母材結晶粒が認められ, また, ファーネス加熱窒化では, 0.7μmの窒化層と粗大化結晶粒が観察された. 3点曲げによる割れ発生状況と窒化層の密着性の観察では, 窒化層にいずれも割れが発生した. 硬度測定では, いずれの試料も, 窒化後に硬度が高くなり, レーザ窒化試料の硬化が最も著しかった. 耐摩耗性は, レーザ窒化試料での向上が最も大きかった.

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© 1995 大阪歯科学会
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