色材協会誌
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鉛筆引っかき試験法の吟味
上田 智昭坪田 実
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1986 年 59 巻 7 号 p. 391-397

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抄録

鉛筆引っかき試験の測定機構に知見を得る目的で次の実験を行った。まず, 鉛筆の硬度記号と芯のVickers硬さ (Hv) との相関性を調べた。次に, Sn, ZnまたはPbを用いて試作した組成・硬さの明らかな合金芯を鉛筆と同様に用い, 硬さの一連に異なる種々の塗膜について引っかき試験を行った。そして, これらの引っかき試験値と塗膜の諸物性値との関係を調べた。実験結果をまとめると次のようである。
(1) 検査済鉛筆の硬度記号とHvには相関が認められた。
(2) 鉛筆および合金芯による引っかき値と塗膜のHv値・モジュラス値との関係は明瞭でなく, 引っかき試験は塗膜の硬さのみを評価する試験ではない。
(3) 鉛筆芯と合金芯とを比較すると, 合金芯による引っかき値は鉛筆芯のそれに比べて塗膜の抗張力の差異をより明確に反映した。
(4) 塗膜の引っかき値に対応する芯のHv値は合金芯の方が鉛筆芯のそれに比べ常に高かった。鉛筆芯が脆性破壊による欠損であるのに対し, 合金芯は塑性変形することがその原因と考えられる。

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