神経眼科
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視覚系障害に注意を要する薬物療法
津田 浩昌
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2014 年 31 巻 3 号 p. 320-325

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抄録

薬剤による眼科領域の副作用は,視神経症,網膜症,眼球運動障害,眼瞼攣縮,眼圧上昇,緑内障,白内障,眼炎症,瞳孔異常など,きわめて多岐にわたる.本稿では,臨床の現場で使用頻度が高く,視覚系障害に注意すべき薬剤について概説した.抗不整脈薬のamiodaroneは,全例に角膜への色素沈着がみられるが,稀に視神経障害を起こす.Digitalis投与中は,患者が光視症や黄視症を自覚することが多い.抗菌剤では,metronidazole,ciprofloxacin,linezoridoで視神経障害が起こりうる.さらにciprofloxacinには,posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES),pseudotumor cerebriの副作用も報告されている.抗結核薬では,ethambutolとisoniazidに中毒性視神経症,rifabutinにはぶどう膜炎の副作用がある.抗てんかん薬のtopiramateは,副作用として隅角閉塞性緑内障,近視,視神経障害,卵黄様黄斑症,脈絡膜剥離が報告されている.抗ヒトtumor nectosis factor-alfa モノクローナル抗体の副作用として,infliximabは網膜症,視神経炎,視交叉障害があり,adalimumabとetanerceptには視神経炎がある.Interferon alfaの副作用としては,網膜症の頻度が高く,その他に結膜下出血,眼圧上昇,網膜剥離,虚血性視神経症が報告されている.抗がん剤では,白金製剤の頸動脈内投与に伴い,急性発症の中毒性視神経症が起こりうる.Vincristineの副作用には,視神経症,動眼神経麻痺,外転神経麻痺,全外眼筋麻痺が報告されている.Tamoxifenの副作用には,黄斑症と視神経症の既報告がある.また,FOLFOX療法に伴い,両眼性の虚血性視神経症が起きた症例が報告されている.勃起不全治療薬のphosphodiesterase-5 inhibitorには,稀な副作用として非動脈炎性前部虚血性視神経症があることを,事前に患者へ告知しておくべきである.Visphosphonate製剤の副作用には,ぶどう膜炎を主とした眼炎症の他に,視神経障害が報告されている.免疫抑制剤では,fingolimodは黄斑浮腫が用量依存性に起こりうる.CyclosporineにはPRES,視神経症,TacrolimusはPRES,視神経症,黄斑症が,副作用としてそれぞれ報告されている.上述の薬剤を使用する際には,視覚系の副作用に留意する必要がある.

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© 2014 日本神経眼科学会
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