2020 年 37 巻 2 号 p. 171-175
36歳,女性.瞳孔がしずく様の形になると近医を受診し,瞳孔不同を指摘され,当科初診となった.初診時の瞳孔径は明所で瞳孔不同(R>L)がみられた.神経内科で右Adie症候群と診断され,0.125%ピロカルピン試験で右眼,その後経過中に左眼の過敏性獲得を確認し,両眼のAdie症候群と診断した.初診時には確認できなかったが,患者自身が撮影した写真から右眼と左眼発症初期にtadpole-shaped瞳孔を確認した.患者自身がスマートフォンで撮影した瞳孔の写真が症状確認の手法として有用であった.本症例の両眼の経過から,tadpole-shaped瞳孔は,Adie症候群において発症初期に瞳孔括約筋が完全に麻痺するまでの過程で生じた可能性が示唆された.