抄録
症例は70歳,男性.既往に脳動静脈奇形があり,痙攣発作を繰り返していた.仕事中に痙攣発作があり,救急搬送された.痙攣はジアゼパムの投与で改善したが,心電図変化から(I,aVL,V1~5のST上昇)急性心筋梗塞を疑われ,緊急カテーテル検査を施行されるも,冠動脈は正常であった.しかし,左室造影で心室中部の無収縮と心室基部および心尖部の過収縮を認め(左室駆出率40.4%),mid ventricular ballooningが疑われた.経時的に左室壁運動の改善傾向を認め,第9病日に軽快退院となった.ストレスなどを契機として発症するたこつぼ心筋障害の亜型としてmid ventricular ballooningが報告されているが,現在までに数例程度しかなく,特に痙攣を契機としたものはほとんど報告がなく,臨床的に重要であると考えられたので報告した.