心臓
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41 巻, 11 号
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Open HEART
HEART’s Selection (急性心筋炎)
HEART’s Special
  • 後藤 葉一, 野口 輝夫, 川上 利香, 中西 道郎, 伊吹 宗晃, 大塚 頼隆, 野々木 宏
    原稿種別: HEART’s Special
    2009 年41 巻11 号 p. 1205-1215
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞症(acute myocardial infarction; AMI)患者に対する回復期心臓リハビリテーション(心リハ)は,運動耐容能・生活の質(quality of life; QOL)・長期予後を改善することが示され,診療ガイドラインでも推奨されている.しかしわが国では,AMI患者の在院日数が大幅に短縮され,従来の病院滞在型心リハ実施が困難になっている一方で,退院後の外来通院型心リハの実施率は日本循環器学会認定循環器専門医研修病院においてさえ極めて低率(9%)であることが全国実態調査により報告されている.さらに最近,年間AMI入院患者数がメディアン値(35例)以下の中小病院では1日5人以上の心リハ参加患者を確保することは容易ではないこと,心リハの採算性は平均値としては黒字であるものの施設間のばらつきが大きいことが明らかにされた.これらの結果を踏まえると,今後,採算を維持できる心リハ患者数の確保が困難である中小病院では,AMI地域連携パスにより既存の外来心リハ実施施設を地域で活用することが1つの解決策となると考えられる.本稿では,わが国における心リハの実態を踏まえ,われわれが取り組んでいる「心リハを組み込んだAMI地域連携パス」の試みを紹介する.
Editorial Comment
HEART’s Original
臨床研究
  • 洞井 和彦, 河野 智, 藤原 靖恵, 松田 光彦
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1217-1221
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    背景:A型急性大動脈解離は全身性炎症反応症候群や急性肺障害(acute lung injury;ALI)を発症することによる高度の呼吸不全を起こすことがあり,morbidityやmortalityを高める原因となっている.今回,当施設における急性大動脈解離術後のALIについて検討したので報告する.
    対象:最近2年間で施行したA型急性大動脈解離手術22例(男性6例,女性16例) を対象とし,平均年齢は67.1±2.7歳であった.全例,診断されて24時間以内に緊急手術(脳分離体外循環下に上行大動脈人工血管置換術)を施行した.術後,ALIの有無は診断基準により確定し,適宜薬物治療(シベレスタットナトリウム)を行った.
    結果:病院死亡は全体では1例(1/22例,4.5%)で,ALI発症は14例(14/22例,63.6%)であった.ALI発症の有無による検討で,補助循環で超低体温法を用いた症例,人工心肺・手術時間がより長い症例においてALIの発症が多く(p<0.05),病型,術前因子においては有意差を認めなかった.シベレスタットナトリウムの投与はALIの改善に有効で,人工呼吸器の離脱を促進させた.
    結語:本研究では,急性大動脈解離術後のALIは外科的侵襲の増大により発症しやすく,より迅速かつ的確な手術工夫を行っていくことが肝要と思われた.また,ALI発症時には,早期にシベレスタットナトリウム投与も有効であった.
症例
  • 久保 健一郎, 石橋 巌, 宮崎 義也, 酒井 芳昭, 松野 公紀, 浪川 進, 佐野 雅則, 山岡 智樹, 大野 雅樹, 川名 秀忠
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1222-1226
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.2007年1月下旬より感冒様症状を認め,2月上旬に意識障害の精査のため入院.心電図で四肢誘導・胸部誘導広範囲でST上昇を認め,心エコーで心尖部の無収縮・心基部の過収縮(たこつぼ様)を認めた.冠動脈造影では右冠動脈および左前下行枝にそれぞれ75%狭窄を認めたが,血栓を認めず梗塞血管とは考えにくかった.左室造影は心エコーと同様にたこつぼ様であった.保存的に加療していたが,第6病日に突然心タンポナーデによる心肺停止となった.剖検所見では心尖部に約1cmの裂創を認めた.組織学的に局所性に単核細胞浸潤を認め,局所性の心筋炎の診断となった.
Editorial Comment
症例
  • 牧元 久樹, 池ノ内 浩, 伊藤 敦彦, 小栗 岳, 藤田 大司, 明城 正博, 杉下 靖之, 田部井 史子, 野崎 彰, 羽田 勝征, 杉 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1229-1236
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.高血圧症と高脂血症で内服加療中であった.早朝不慣れな満員電車に乗車中,胸部圧迫感を自覚し,近医を受診.ST上昇とトロポニンT陽性から心筋梗塞が疑われ,当院に救急搬送された.収縮期心雑音IV/VIが聴取された.当日行われた緊急冠動脈造影にて冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影で心尖部無収縮と心基部の過収縮を伴った心尖部バルーニングを認めたことからたこつぼ心筋症と診断.カテーテル引き抜き時に大動脈-左室間で80mmHgの圧較差を認めた.心臓超音波検査では心尖部無収縮にS字状中隔を伴い,左室流出路圧較差を認めた.保存的加療にて壁運動は第10病日には改善,流出路圧較差も消失した.退院1カ月後,S字状中隔と流出路圧較差の関連を調べる目的にて薬剤負荷試験を施行した.イソプロテレノール・ドブタミン・硝酸イソソルビドの投与で流出路圧較差が出現,急速輸液・ジソピラミド・プロプラノロール投与で流出路圧較差は軽快した.本例ではS字状中隔の存在がたこつぼ心筋症発症時の左室流出路圧較差出現の原因と考えられた.S字状中隔には病的意義は少ないとする意見もあるが,本例のごとくたこつぼ心筋症の発症を契機として,流出路圧較差を生じ血行動態に影響を与える可能性も考えられる.S字状中隔の病的意義を考慮するうえで示唆に富む症例と考えられたため,ここに報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 山川 元太, 綾部 征司, 内田 梨沙, 谷口 茂夫, 関根 信夫, 井上 泰
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1239-1245
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.2007年3月より労作時息切れが出現し,その後しだいに増悪,7月には失神発作・下腿浮腫を認め,緊急入院.心電図上に右心負荷を認め,肺塞栓症を疑い,胸部造影CTを行ったところ肺動脈主幹部に一塊の巨大な腫瘤影を認めた.抗凝固療法を開始するも,症状・腫瘤像に改善はみられなかった.末梢肺動脈の血栓像認めず,血管壁の肥厚も伴っており肺動脈原発肉腫を疑った.患者は第9病日に呼吸困難を訴えた後に突然死し,病理解剖にて肺動脈内膜肉腫と診断された.肺動脈内膜肉腫を含めた肺動脈原発肉腫は1923年のMandelstammの最初の報告以降これまでに約200例程度の文献報告がみられる比較的稀で予後不良の疾患であり,手術療法が唯一の根治的治療であるが成功例の報告は少ない.臨床的には肺動脈血栓塞栓症との鑑別が問題となり,CTでの肺動脈主幹部の壁肥厚像やDダイマーの比較的低値では肺動脈内膜肉腫を積極的に疑う必要があると考えられた.
症例
  • 永井 利幸, 唐澤 隆明, 真鍋 知宏, 影山 智己, 香坂 俊, 河村 朗夫, 安斉 俊久, 岩永 史郎, 吉川 勉, 小川 聡
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1246-1251
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.既往に脳動静脈奇形があり,痙攣発作を繰り返していた.仕事中に痙攣発作があり,救急搬送された.痙攣はジアゼパムの投与で改善したが,心電図変化から(I,aVL,V1~5のST上昇)急性心筋梗塞を疑われ,緊急カテーテル検査を施行されるも,冠動脈は正常であった.しかし,左室造影で心室中部の無収縮と心室基部および心尖部の過収縮を認め(左室駆出率40.4%),mid ventricular ballooningが疑われた.経時的に左室壁運動の改善傾向を認め,第9病日に軽快退院となった.ストレスなどを契機として発症するたこつぼ心筋障害の亜型としてmid ventricular ballooningが報告されているが,現在までに数例程度しかなく,特に痙攣を契機としたものはほとんど報告がなく,臨床的に重要であると考えられたので報告した.
症例
  • 中川 貴文, 日浅 芳一, 陳 博敏, 宮崎 晋一郎, 馬原 啓太郎, 小倉 理代, 宮島 等, 弓場 健一郎, 高橋 健文, 岸 宏一, ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1252-1256
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.既往に前壁中隔心筋梗塞がある.慢性咳に対して麦門冬湯を約1年前から内服していた.2008年8月上旬胸部不快感を主訴に近医を受診した.心電図上持続性心室頻拍が認められており当院を紹介受診した.救急外来にてニフェカラントの静注にて洞調律に復帰した.心臓超音波検査では左室拡張末期径55mm,左室駆出率46%と心機能低下を認めていた.入院時の血液検査所見では血清カリウム値2.1mEq/Lと著明な低カリウム血症と代謝性アルカローシスの所見を認めた.本症例では甘草を含有する漢方薬の長期内服歴と,低カリウム血症,尿中カリウム排泄の増加,尿細管カリウム排泄濃度高値,代謝性アルカローシス,高血圧症,血漿レニン活性の低下,血中アルドステロン濃度の低下などの検査結果より偽性アルドステロン症と診断した.原因薬剤の中止とカリウム製剤投与によって血清カリウム値は徐々に正常化し,心室頻拍の再発を認めなかった.本例のような低心機能例に対して甘草を含む漢方薬の長期内服はときに低カリウム血症を生じ,心室頻拍などの致死性不整脈の原因となり得ることを示した症例と考えられたため報告する.
症例
  • 長井 瞳, 石山 泰三, 根岸 朋子, 森田 綾乃, 高田 宗尚, 菊池 祐二郎, 聡 西田, 宮城 学, 渡邊 剛, 山科 章
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1257-1262
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.61歳時に特発性血小板増多症の診断を受け当院血液内科通院中であった.2007年5月ころより全身倦怠感自覚,貧血の進行および脾腫,炎症反応高値を認め外来にて精査中であった.6月中旬より38℃の発熱が出現するようになり,食欲低下や全身倦怠感強く,精査加療目的にて血液内科に入院となった.抗菌薬投与下でも解熱傾向なく,精査目的に施行した経胸壁心エコー図検査にて,偏位した大動脈弁逆流と大動脈弁に付着する疣贅を認めた.血液培養は陰性であったが臨床所見より感染性心内膜炎と診断し抗生物質投与を開始した.炎症反応は速やかに改善し,心エコー図検査でも疣贅は消失したが,第11病日には偏位した大動脈弁逆流が当たる僧帽弁前尖基部に直径9mmの感染性瘤を認めたため外科的手術を施行した.術中肉眼所見上は,感染性瘤は大動脈弁-僧帽弁間の線維組織に存在し,大動脈弁および僧帽弁前尖の性状は保たれていた.このため,人工弁置換術は施行せず,瘤内をバンコマイシン含有のフィブリン糊で充し,自己心膜パッチで閉鎖.大動脈弁形成術を追加し終了した.自己弁を温存し自己心膜を感染瘤閉鎖に用いた手法は過去に報告がないため今回報告した.
症例
  • 賀来 文治, 山本 隆介, 山口 由明, 勝田 省嗣, 田口 富雄, 新田 裕, 平岩 善雄, 池田 真浩
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1263-1273
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.以前から高血圧を指摘されるが放置.入院3日前に胸痛を自覚.その後に軽度の労作時呼吸苦も自覚していた.2008年4月初旬の早朝,排便中に著明な呼吸苦が出現し緊急搬送された.来院時は起座呼吸状態.体血圧251/122mmHg.心尖部にLevine 3/6の収縮期雑音を聴取.胸部X線写真では肺水腫を認めた.無治療の高血圧を原因とした心不全の診断で入院.入院時の脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は8.6pg/mLと上昇を認めなかった.血管拡張薬と利尿薬内服後の安定期での心臓超音波検査では全周性の左室肥大を認め,左房径は38mm,左室拡張末期径,収縮末期径はそれぞれ37mmと19mm,左室短縮率は49%であった.また,僧帽弁前尖の逸脱および僧帽弁逆流を認めたが,経胸壁心臓超音波検査上はその程度は重度ではなかった.近位部等流速表面(proximal isovelocity surface area; PISA)法により算出した僧帽弁有効逆流弁口面積は0.34cm2,僧帽弁逆流量は19mL/beatであった.心不全コントロール後の心臓カテーテル検査による心内圧測定では(コントロール:この時の体血圧124/84mmHg); 肺動脈楔入圧7mmHg,肺動脈圧23/13mmHg,と左房圧の上昇や肺高血圧を示唆する所見なし.しかし,体血圧が167/94mmHgに上昇した後に著明なV波が出現し(V波ピーク47mmHg),肺動脈楔入圧22mmHg,肺動脈圧45/22mmHgと急激な上昇を示した.本症例では体血圧(後負荷)の上昇に対して,僧帽弁逸脱症による僧帽弁逆流が増加し,急激に左房圧の上昇が起こると考えられ,僧帽弁逸脱症に対する手術がなされた.心原性の肺水腫を呈したにもかかわらず,BNPの上昇を認めておらず心不全の診断においても注意を要すると同時に,病態把握のために,心臓カテーテル検査中に偶然記録された,血行動態の変化が有用であった.
Editorial Comment
症例
  • 三島 健人, 山本 和男, 佐藤 正宏, 上原 彰史, 滝澤 恒基, 杉本 努, 吉井 新平, 春谷 重孝
    原稿種別: HEART’s Original
    2009 年41 巻11 号 p. 1276-1279
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.2004年3月に交通事故で左血胸,左肋骨骨折を含む多発外傷の既往あり.2006年の健診の胸部X線写真で異常を指摘され,精査で三尖弁の逸脱による重度の三尖弁閉鎖不全症の診断.2007年2月手術施行.臓側心膜が心尖部で欠損しており心膜癒着を全周に認めた.三尖弁は,乳頭筋や腱索に明らかな断裂を認めなかったが前尖の腱索が延長しており三尖弁形成術を施行した.術後経過は良好であった.本症例は明らかな腱索の断裂や弁尖損傷の所見はないものの腱索の延長や心膜の欠損を認め,外傷による三尖弁閉鎖不全と考えられた.断裂や損傷のない三尖弁閉鎖不全は非常に稀と考えられたので報告する.
Meet the History
  • 矢崎義雄先生に聞く
    矢崎 義雄, 磯部 光章
    原稿種別: Meet the History
    2009 年41 巻11 号 p. 1281-1293
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    矢崎義雄先生は,循環器疾患の病態解析において分子生物学的,遺伝子工学的手法を導入し,病態の分子・遺伝子レベルでの解明に貢献されました.特に,心筋ミオシン重鎖のアイソザイムの発見で,心不全や心肥大の病態解明に大きな足跡を残しました.また,モノクローナル抗体を用いた画期的な心筋梗塞の診断法を開発されました.
    今回は,矢崎先生の門下で,本誌編集委員の磯部光章先生をホストに,当時の研究の苦労話や,矢崎先生が改革された東京大学の診療科の統合,国立病院の独法化など,さまざまなお話をお伺いしました.
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