心臓
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症例
急性冠症候群を発症した特発性血小板減少性紫斑病症例に対しステント治療が成功した1例
丸山 園美井上 健司岡井 巌小松 かおる西澤 寛人岡崎 真也藤原 康昌平野 隆雄住吉 正孝代田 浩之
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2009 年 41 巻 8 号 p. 953-959

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抄録

冠動脈ステント治療には抗血小板薬の内服が不可欠であるが, 血小板減少症例では出血の危険性を助長するため投与に苦慮する. 今回われわれは特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura; ITP) 患者に発症した急性冠症候群に対し, 安全に通常型ステントを留置し, その後再狭窄を認めず, 順調に治療し得た症例を経験したため報告する. 症例は78歳, 女性. 2年前に血小板減少(5.5×104/µL) を指摘された. 血小板結合性免疫グロブリンG(platelet associated immunoglobulin G; PAIgG) の上昇もありITPが疑われたが通院を自己中断していた. 入院2カ月前に労作時胸痛を認めたため, 冠動脈CTを施行したところ, 左前下行枝seg7に90%狭窄を認めた. 早期に入院し, 心臓カテーテル検査の施行を勧めたが, 家庭の事情で拒否していた. しかし, その後安静時にも胸痛を認めるようになり, 当院外来を再度受診した. 心電図検査でV1~4の陰性T波を認め, 急性冠症候群の診断で緊急入院となった. CAG所見では左前下行枝seg7に90%狭窄病変を認め, 通常型ステントを留置しアスピリン100mg/日とクロピドグレル50mg/日の内服を開始した. ITPに対してはプレドニゾロン0.5mg/kg(20mg/日) の内服を抗血小板薬と同時に開始し, 血小板数を15×104/µL以上に維持できた. その後重大な合併症なく抗血小板薬の内服継続が可能で, 6カ月後の再造影検査でもステント再狭窄は認められなかった.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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