抄録
症例は39歳, 男性. 運動中に胸苦しさが出現した後に意識消失し, 自動体外式除細動器(AED)を装着したところ心室細動(VF)が確認され, 除細動1回で蘇生した. その後の近医での精査の結果, 冠攣縮性狭心症の診断でdiltiazemが導入となったが, 自己判断で内服を中断していたところ, 再び運動中に, 以前と同様の症状が出現した後に意識消失. 意識回復直後の心電図では心房粗動(AFL)が認められた. 当科紹介受診時もAFLが持続していたが, 心エコー上は器質的異常を認めなかった. 運動負荷試験を施行したところ, AFLの1: 1伝導による心拍数270/分のwide QRS tachycardiaを認め, 意識消失発作の前に認められた胸部症状と一致した. 心臓電気生理学的検査(EPS)ではVT・VFは誘発されず, 意識消失発作の原因としては1: 1伝導のAFLにより引き起こされたVFが最も疑われたため, AFLに対しアブレーションを施行し, AFLの根治が得られた. しかし, AFL以外に特発性VFも完全に否定できず, 植込み型除細動器(ICD)導入も検討している.