抄録
患者は14歳の男児. 過去に5度の失神歴があり, 叔父が19歳で突然死している. 授業中に失神発作をきたし, 当院救命センターに搬送された. モニター心電図で5.5秒間の発作性房室ブロックが認められた. 入院させ, 検査を進めていたところ, 心電図のV1~V2誘導でcoved型ST上昇の自然変動が認められた. 加算平均心電図で心室late potensials陽性, pilsicainide負荷試験陽性, 電気生理学的検査で, 心室細動の誘発を認めたことから, Brugada症候群が疑われた. しかし, 画像診断で左心機能に問題はなかったものの, 右室心尖部において軽度の壁運動低下が認められた. 右室心筋生検を行ったところ, 心筋内への脂肪組織の浸潤が認められ, 最終的に不整脈原性右室心筋症と診断された. 後日, 突然死の予防目的で植込み型除細動器(ICD)植え込み術が施行された. Brugada症候群との鑑別に苦慮した小児の不整脈原性右室心筋症症例であったので報告する.