抄録
症例は65歳, 男性. 左冠動脈前下行枝seg.6の閉塞による急性心筋梗塞を起こした後, 重症心不全による入退院を繰り返すようになった. 内科的治療が限界となったため, 当院心臓血管外科にて左室形成術〔(septal anterior ventricular exclusion; SAVE)手術〕, 僧帽弁形成術, 三尖弁形成術が施行された. 術後の経過は順調であり, 利尿薬, 強心薬などの内服による外来通院が可能となった. しかし, 術後6カ月で再度心不全症状が増悪, 利尿薬, カテコラミンなどによる加療を行ったが, 十分な尿量が得られず, 週3回の体外限局濾過法(extracorporeal ultrafiltration method; ECUM)を開始した. その後, 肺うっ血などの心不全症状は改善し, 強心薬を漸減, 内服薬へと切り替えることができた. しかし, ECUM開始後も低心拍出量のため尿量が不十分であり, 血液維持透析を導入した. その後経過は良好で退院したが, 退院から数日後, 心室頻拍(ventricular tachycardia; VT)による心肺停止状態となり, 救急車内で電気的除細動が行われた後, 当院に搬送された. 病歴と経過より植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)の適応であると考え, ICDの植え込みを行った. 2007年7月に内科的治療が限界となって以来, SAVE手術, 僧帽弁および三尖弁形成術, 血液透析導入, ICD植え込み術などの集学的治療により2年6カ月以上QOLを維持して, 日常生活を行っている重症慢性心不全の1例を報告する.