喫煙・糖尿病・高血圧症・脂質異常症を有する72歳, 男性. 2008年5月初旬胸痛にて来院, 急性心筋梗塞と診断し冠動脈造影検査を施行した. 左前下行枝(left anterior descending artery; LAD)および左回旋枝・右冠動脈末梢に高度狭窄を認め, 責任病変LADに対して経皮的冠動脈ステント留置術を施行した. 術後もST上昇は持続し, 翌日に認めたCK最高値は6,400 IU/Lであった. 第6病日に心不全をきたし, 人工呼吸器管理を要した. 第8病日に心室中隔穿孔(ventricular septal perforation; VSP)を合併した. その前後において血行動態や酸素化は大きく変化せず, Qp/Qs 1.6であることや呼吸器関連肺炎を認めたことから保存的に加療した. 全身状態改善後も静注カテコラミンの離脱が困難であり穿孔部閉鎖・左室形成術も再度検討したが, 手術リスクを考え体外限外濾過法(extracorporeal ultrafiltration method; ECUM)を用いて心不全コントロールを試みた. ECUM導入後静注薬を離脱し, NYHAクラスIで現在外来にて経過観察中である. 手術リスクが高く, VSPを合併した急性心筋梗塞後の心不全コントロール困難であった本症例では, 薬物療法に加えてECUM併用療法は有用であった.