抄録
症例は76歳, 女性. 1989年に洞不全症候群(II型)にてDDDペースメーカー植え込みを施行した. 2001年にペースメーカー感染を発症したため, 保存的治療を行い, 以降, 良好に経過していた. 2008年6月に電池消耗のため, ペースメーカー交換を施行した. その18日後にポケット部の皮膚に瘻孔が形成され, 膿の漏出が認められ, ペースメーカー感染の診断で入院となった. ペースメーカー本体を除去し, ポケット内デブリードマンを行った. リード線は用手法では容易には抜去できず, 可視範囲内で2本ともリードのコネクト部を切断した. 血液とポケット内の培養より緑膿菌が検出されたため, 6週間抗生物質投与を行った. しかし, 2009年3月に39℃の発熱にて入院となった. 血液培養より緑膿菌が検出され, 残存リード線の感染と診断した. 2009年3月中旬に心臓外科医および体外循環装置の待機下, 心室リード(フィン型)に対して, 右大腿静脈アプローチでリード抜去術を行った. 8Frブライトチップシースを右大腿静脈に挿入した. ピッグテイルカテーテルをリードにかけ, アンプラッツグーズネックスネアでガイドワイヤーを捕捉し, ループを作成した. リードの中の鎖骨下静脈断端に近い部位に固定し引いたところ, 同側のリード断端が遊離された. 次にその断端をスネアで捕捉し, シースとともに引いたところ, リード全体を抜去することができた. ペースメーカーリード感染に対し, 経大腿静脈アプローチにて留置後20年のペーシングリードを抜去し得た症例について報告する.