動脈硬化性腎動脈狭窄症(atherosclerotic renal artery stenosis; RAS)は進行性の疾患であり, 予後不良となる独立した危険因子である. 稀な疾患ではないが, 特異的症状に乏しく医師がRASの存在を疑わなければ見逃される可能性が高い. このため, 発生頻度の高い患者群からこの疾患を早期に検出する確実な診断手法が必要である.
閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterance; ASO)が疑われて腎から下肢まで一期的にMDCTアンジオグラフィを行った連続325例を対象に, その診断精度, ASOとRASの合併頻度, 本検査法の臨床的意義を検討した.
血管造影法を真とした場合, ASOに対するMDCTアンジオグラフィの診断精度は, それぞれ感度: 93.6%, 特異度: 98.1%, 陽性的中率: 96.9%, 陰性的中率: 96.1%, 正診率: 96.4%で, RASに対するMDCTアンジオグラフィの診断精度は, それぞれ感度: 95.6%, 特異度: 99.2%, 陽性的中率: 95.6%, 陰性的中率: 99.2%, 正診率: 98.6%であり, 臨床的に精度の高い検査と考えられた.
ASOを疑われた患者の約13.5%に有意なRASが存在し, ASO(+)群のRASの合併率はASO(−)群より有意に高かった. 腎から下肢までの一期的MDCTアンジオグラフィは上前腸骨棘から下肢までのMDCTアンジオグラフィより被曝量(dose length product; DLP)が約1.45倍多かったが, 1回の造影剤投与でRASの早期発見が可能であり, 臨床的意義があると考えられた.
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