心臓
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症例
古典的201Tl心筋シンチグラフィが唯一, サルコイドーシス患者における心病変の活動度評価に有用であった2例
賀来 文治吉田 太治下島 正也勝田 省嗣田口 富雄新田 裕平岩 善雄岩佐 桂一
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2011 年 43 巻 6 号 p. 776-787

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抄録
症例1: 53歳, 男性. 49歳時に心臓サルコイドーシス(心サ症)の診断を得てプレドニゾロン(PSL) 30mg/日の内服が開始された. 以後PSLの減量を行い, 7.5~10mg/日の維持量で継続投与中であったが, 201TI心筋シンチグラフィにて左室前壁と下壁に集積低下所見が進行した. この時点で, 67Gaシンチグラフィ, 造影MRI検査, 心臓超音波検査, 左室造影検査の再検を行ったが異常所見の増悪はなかった. 冠動脈に狭窄所見なく, 血清アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme; ACE), 脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)値の上昇もなし. 201TI心筋シンチグラフィ以外は異常がなかったが, 心サ症の再燃を疑いPSLを30mg/日に増量した. 増量後, 201TI心筋シンチグラフィの集積異常は改善を示した.
症例2: 75歳, 男性. 69歳から肺および眼サルコイドーシスにてPSL 2.5mg/日の投与を受けていた. 70歳時の心電図より左脚前枝ブロックを認めていたが, 右脚ブロックの新たな進行を認め, 循環器内科を受診した. 201TI心筋シンチグラフィでは, 左室前壁と下壁に集積低下を認めたが, 67Gaシンチグラフィでは心臓を含め肺門部にも集積亢進を認めず, 血清ACE値も正常範囲であった. 造影MRI, 心臓超音波検査, 左室造影検査, 冠動脈造影検査でも異常所見を認めず, 心筋生検でも非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は証明されなかった. PSL増量に関しては苦慮したが, 201TI心筋シンチグラフィでの集積異常を説明できる異常が冠動脈を含め, そのほかには認められないことに加え, 伝導障害の進行より心サ症の存在が強く疑われ, PSLを20mg/日に増量した. 増量後3カ月目に施行した201TI心筋シンチグラフィでは, 前壁の集積異常の明らかな改善を認めた. ステロイド投与後の心サ症の活動度評価には, 各種の画像診断的手法やACE測定などがあるが, 本2症例では(日常臨床の場で繰り返し施行できる評価法の中で), 古典的な201TI心筋シンチグラフィが最も有用であった. 造影MRI検査の有用性が強調されている昨今においても, 心サ症の活動度の評価には201TI心筋シンチグラフィも含め多面的な評価が必要と考えられる.
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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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