心臓
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43 巻, 6 号
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Open HEART
HEART’s Selection (心不全に対する外科治療:左室形成術)
HEART’s Original
臨床研究
  • 富田 英春, 橋本 朋也, 打和 大幹, 吉田 昌義, 浦田 真吾
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 743-750
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    背景および方法: 2009年に高血圧治療ガイドライン(GL)が改訂され, より厳格な降圧目標が求められるようになった. 2009年7月から9月に当院を受診し, 降圧治療を行った高血圧症145例を新GLに従いリスクを層別化し, 降圧目標の達成率を調査した.
    結果: 145例(平均71.4歳)の臓器障害合併は脳血管疾患18例(12.4%), 心疾患77例(53.1%), 腎疾患65例(44.8%)であった. 外来診察時の血圧の平均値は132.8/70.7mmHgで正常高値レベル40例(27.5%), I度高血圧レベル40例(27.5%), II度高血圧レベル10例(6.9%), III度高血圧レベル1例(0.7%)であった. リスクの層別化分類は1層9例(6%), 2層24例(17%), 3層112例(77%)と7割以上が3層に分類された. 降圧目標基準を140/90mmHg未満とした場合の達成率は66%であったが, GLの降圧目標基準での達成率は47%であった. 正常高値高血圧40例中, GLの降圧目標基準により28例(70%)が未達成となり, その関連する要因は, 慢性腎臓病, 糖尿病, 陳旧性心筋梗塞合併時の降圧目標の厳格化であった. 75歳以上の高齢者は, 拡張期血圧が有意に低下し, eGFR, リスク層別化の階層, 服薬総数が有意に増加した.
    総括: 高血圧症例は加齢に伴い増加するが, 臓器障害や危険因子をもつ高リスク症例では, 厳格な降圧目標到達には乖離を認める.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 白石 裕一, 畔柳 彰, 白山 武司, 中村 猛, 山野 哲弘, 松室 明義, 沢田 尚久, 松原 弘明
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 754-759
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性. 器質的心疾患を伴わない, 頻脈性持続性心房細動に対し, ベプリジル200mgを投与. 外来で観察中は心房細動が持続していたが, QT時間の延長は認めていなかった. 約2カ月後に全身倦怠の精査目的に入院. 入院時, 心房細動リズムで, QTcは0.460と軽度延長, ST-T変化を認めた. エコーなどで心筋障害は否定されたため, ジギタリスを休薬し観察していたところ, 入院後5日目に, 自然に洞調律に復帰. その4時間後, 失神を伴うtorsades de pointes(TdP)を約1分間生じた. 直前の心電図でQT延長(QTc/0.582)を認め, 採血で軽度の低カリウム血症(3.4mEq/L)を認めた. ベプリジル投与を中止し, カリウムの補正を行ったところ, 徐々にQTは正常化した. 後日行った冠動脈造影は正常であった. ベプリジルは洞調律復帰を目的とする抗不整脈薬である. 本例では, 洞調律復帰時を捉え, 直後に, 軽度の低カリウム血症を誘因に一過性のQTの延長, TdPを認めた. QT測定には胸部誘導にも注意を払い, T波形の形態の変化にも注意すること, T波の変化を伴うような例では, QT時間を過小評価する可能性があるため, 頻繁に12誘導心電図記録, またホルター心電図を記録するなど, より慎重な検討を行うことが重要であると考えられた. 一連の心電図経過が追えた貴重な症例であり, 文献的考察を加えて報告する.
症例
  • 佐藤 友美, 上岡 正志, 泉田 次郎, 斎藤 恒儀, 斎藤 富善, 前原 和平, 鈴木 均, 竹石 恭知
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 760-765
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    早期再分極は広く健常者でもみられる心電図変化で, 人口の1~5%に認められる. 近年, 特発性心室細動患者の中に下壁誘導で早期再分極を認める患者群の存在が報告され, 注目を集めている. われわれは, 特発性心室細動蘇生後の12誘導心電図において, 下壁誘導でST上昇を呈した症例を経験した. 胸部X線では心拡大, 肺うっ血は認めず, 心臓超音波検査でも器質的心疾患を示唆する異常所見はなかった. 入院後の深夜3時に記録した心電図においてST上昇が顕在化した. 冠動脈造影では, 有意狭窄はみられなかったが, アセチルコリン負荷でST上昇が顕在化し, 右室早期三連刺激にて, 心室細動が誘発された. 一方, イソプロテレノール負荷下ではST上昇は基線に戻り, 心室細動は誘発されなかった. 以上より, 本症例の心室細動の発症ならびに早期再分極の増悪に迷走神経の緊張が関与している可能性が示唆された.
症例
  • 手塚 大介, 佐藤 弘典, 岸野 充浩, 稲葉 理, 吉川 俊治, 原口 剛, 木村 茂樹, 稲垣 裕, 蜂谷 仁, 平尾 見三, 磯部 光 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 766-771
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は, 生来健康な77歳, 女性. 意識消失と右半身麻痺, 言語障害で当院に搬送され脳梗塞が疑われた. MRI拡散強調画像では, 線条体内包梗塞所見を認めた. D-dimer, FDPの高値と血液ガス所見でのO2低値から肺血栓塞栓症を疑い, 造影64列multi detector-row computed tomography(MDCT)を施行したところ, 左膝窩静脈に静脈血栓, 右肺動脈に肺血栓を認め, 3D-MDCTにて左下肺に肺動静脈瘻が描出された. コントラスト心エコーで卵円孔開存がないことが確認され, 深部静脈血栓を起源とした肺血栓塞栓症および肺動静脈瘻を介した奇異性脳塞栓と診断した. 抗凝固療法と根治的治療として肺動静脈瘻にコイル塞栓術を施行し, 酸素化の改善が得られた. また, 3D- MDCTにて1年後も塞栓効果が維持されていることを確認した.
症例
症例
  • 賀来 文治, 吉田 太治, 下島 正也, 勝田 省嗣, 田口 富雄, 新田 裕, 平岩 善雄, 岩佐 桂一
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 776-787
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    症例1: 53歳, 男性. 49歳時に心臓サルコイドーシス(心サ症)の診断を得てプレドニゾロン(PSL) 30mg/日の内服が開始された. 以後PSLの減量を行い, 7.5~10mg/日の維持量で継続投与中であったが, 201TI心筋シンチグラフィにて左室前壁と下壁に集積低下所見が進行した. この時点で, 67Gaシンチグラフィ, 造影MRI検査, 心臓超音波検査, 左室造影検査の再検を行ったが異常所見の増悪はなかった. 冠動脈に狭窄所見なく, 血清アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme; ACE), 脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)値の上昇もなし. 201TI心筋シンチグラフィ以外は異常がなかったが, 心サ症の再燃を疑いPSLを30mg/日に増量した. 増量後, 201TI心筋シンチグラフィの集積異常は改善を示した.
    症例2: 75歳, 男性. 69歳から肺および眼サルコイドーシスにてPSL 2.5mg/日の投与を受けていた. 70歳時の心電図より左脚前枝ブロックを認めていたが, 右脚ブロックの新たな進行を認め, 循環器内科を受診した. 201TI心筋シンチグラフィでは, 左室前壁と下壁に集積低下を認めたが, 67Gaシンチグラフィでは心臓を含め肺門部にも集積亢進を認めず, 血清ACE値も正常範囲であった. 造影MRI, 心臓超音波検査, 左室造影検査, 冠動脈造影検査でも異常所見を認めず, 心筋生検でも非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は証明されなかった. PSL増量に関しては苦慮したが, 201TI心筋シンチグラフィでの集積異常を説明できる異常が冠動脈を含め, そのほかには認められないことに加え, 伝導障害の進行より心サ症の存在が強く疑われ, PSLを20mg/日に増量した. 増量後3カ月目に施行した201TI心筋シンチグラフィでは, 前壁の集積異常の明らかな改善を認めた. ステロイド投与後の心サ症の活動度評価には, 各種の画像診断的手法やACE測定などがあるが, 本2症例では(日常臨床の場で繰り返し施行できる評価法の中で), 古典的な201TI心筋シンチグラフィが最も有用であった. 造影MRI検査の有用性が強調されている昨今においても, 心サ症の活動度の評価には201TI心筋シンチグラフィも含め多面的な評価が必要と考えられる.
Editorial Comment
症例
  • 中村 真胤, 松本 有司, 佐藤 澄子, 森 英城, 太宰 康伸, 高田 泰治
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 789-794
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    患者は43歳, 男性. 肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy; HCM)および心室頻拍(ventricular tachycardia; VT)の治療にて通院中であったが, 内服薬を自己中断した後より, VTが出現し当科外来を受診した. 血圧低下を認め, 血行動態が不安定であるため外来で直流通電を行い洞調律に回復したがVTの再発予防のため入院した. 血液検査では, 中等度の肝障害を認めていたが, 心室頻拍の加療目的のためアミオダロンの静注を開始した. 入院翌日より徐脈が出現したためアミオダロンの静注を中止し, 一時的ペースメーカーを挿入した. しかし, 意識レベルの低下が進行し, 入院第3病日に著明な肝障害の悪化と腎障害があり, さらに血小板数の低下, 血清アンモニア値の上昇, プロトロンビン時間の延長から腎障害を伴った薬剤による劇症肝炎と診断した. 速やかに血漿交換療法を開始し, 血液濾過透析を併用して対処した. 3回の血漿交換により肝障害は改善したもののアミオダロンの再投与は困難と判断し, 突然死の予防として, 植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)の留置術を施行した. アミオダロン投与前に肝障害が認められた場合は, 頻回に肝機能のモニタリングを行うとともに, 肝障害の改善が認められない場合には早期にアミオダロンを中止し, さらに重篤化した場合には血漿交換や血液濾過透析など速やかな対処が必要であると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 中村 浩章, 梅澤 滋男, 加藤 信孝, 川島 朋之, 大西 隆行, 小林 一士, 大西 祐子, 丹羽 明博, 磯部 光章
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 796-802
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 男性. 冠動脈バイパス術の既往がある. 2009年7月初旬から呼吸苦や下肢浮腫が増悪したため, 精査加療目的に入院となった.
    来院時脈拍120/分の心房粗動で, 胸部写真上, 心胸郭比(cardiothoracic ratio; CTR) 57%と拡大し, 心エコーでは左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction; LVEF) 33%だった. 入院後, ベラパミル, 利尿薬, hANPにて心不全治療を行った. 簡易アプノモニターでは, 無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index; AHI) 41.5で, 睡眠呼吸障害(sleep-disordered breathing; SDB)と診断した.
    心不全改善後も停止しない通常型心房粗動に対してカテーテルアブレーション(CA)を施行した. 第16病日には心エコー上, LVEFは46%まで改善した. SDB再評価のため睡眠ポリグラフを施行すると, AHI 8.6と著明な改善を認めた. 点滴加療とCAによる心不全治療でSDBが劇的に改善した興味深い症例である.
症例
  • 平野 景子, 天野 篤, 木村 伯子, 松村 武史, 山城 慶子, 工藤 杏子, 酒井 謙, 永井 史子, 大村 寛敏, 高瀬 優, 成瀬 ...
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 803-810
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性. 25年来の糖尿病, 高血圧があり, 甥に副腎褐色細胞腫が認められていた. 約半年間低血糖発作と思われる冷汗を繰り返し, ある夜強い胸苦しさを自覚した. 前医へ搬送され, 冠動脈造影を施行後, 左冠動脈前下行枝高度狭窄に対しステント留置した. この時, 回旋枝から左房方向へ向かう大きな新生血管と腫瘍造影像を認め, CTで左房から肺動脈にかけて覆い被さるように位置する腫瘍を確認した. 後日, 内分泌学的検査を施行し, 尿中バニルマンデル酸とノルアドレナリンの上昇を認め, 傍神経節腫と診断された. 当院へ転院後, 経食道エコーで腫瘍の左房浸潤を事前に捉え, 心臓傍神経節腫として手術リスクを検討し, 薬物治療施行後, 体外循環下に腫瘍摘出術·冠動脈1枝バイパス術を施行した. 腫瘍は左房壁から左上肺静脈に強く癒着しており, 壁側を一緒に切除し, 欠損部に自己·ウマ心膜を縫合し, 欠損部位を立体的に修復し, 術後イベントなく良好な結果を得た. 術後1年半, 自己心拍は維持され良好な経過で観察されている. 腫瘍は病理組織検査で低分化の所見を認めたものの, 遺伝学的には, 褐色細胞腫におけるコハク酸脱水素酵素遺伝子(SDHB/SDHD) に変異は確認されなかった. 根治的に完全摘出し得た心臓傍神経節腫は現在でも非常に稀であり報告する.
Editorial Comment
症例
  • 佐藤 紘子, 宮脇 洋, 南幅 修, 中田 茂和
    原稿種別: HEART’s Original
    2011 年 43 巻 6 号 p. 812-818
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    完全房室ブロックを合併し, QT延長によるtorsades de pointes(TdP) から心室頻拍を生じた, たこつぼ心筋障害の1例を経験したため報告する.
    症例は71歳, 女性. 買い物中に気分不良とめまいあり, 意識消失し, 転倒. 左股関節痛のため歩行できず, 救急搬送された. 来院後のX線で左大腿骨骨折が認められ, 整形外科に入院となった. 同日夜, 痙攣発作を生じ, モニターでTdPが確認され, その後, 著明なQT延長を伴う完全房室ブロックが明らかになった. 緊急体外ペーシング施行直前の心臓超音波検査で心尖部の低~無収縮と心基部の良好な収縮を認め, たこつぼ心筋障害と診断した. 入院後施行した頭部CT, 頭部MRIで問題なく, 採血でも, 血中カテコラミン濃度やウイルス抗体価に異常値は認められなかった.
    第3病日に恒久ペースメーカー植え込み術施行. 第11病日に施行した冠動脈造影で冠動脈の狭窄は認められず, 左室壁運動は良好であった. しかし, 壁運動改善後も完全房室ブロックの改善は認められず, 急性期のTdP予防効果も含めて, 恒久ペースメーカー植え込み術が有効な症例であった.
Meet the History
  • 関口守衛先生に聞く
    関口 守衛, 磯部 光章
    原稿種別: Meet the History
    2011 年 43 巻 6 号 p. 819-829
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    関口守衛先生は, 大学院で病理学を学び, その知識を活かして心臓バイオプシーの分野を開拓され, 心筋症の生検病理診断に大きな足跡を残されました. また, 医学部卒業後すぐに米国空軍立川病院でインターンとして勤務した経験から, 米国式臨床教育を実践し, 医局員や学生を指導してきました.
    今なお現役の臨床医として活躍されている関口先生をゲストに迎え, 関口先生が信州大学教授時代に助教授として共に仕事をされた磯部先生がホストとして, 常に新しい視点で臨床と研究を結びつけてきた成果と, さまざまなエピソードをおうかがいしました.
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