心臓
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第20回 体表心臓微小電位研究会
重粒子線のヒト心臓照射における電気生理学的検討
吉岡 公一郎網野 真理島 牧義山口 恵子中嶋 美緒岡田 徹鎌田 正出口 喜昭田邉 晃久
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2011 年 43 巻 SUPPL.1 号 p. S1_30

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抄録
心臓における細胞—細胞間の電気的結合と活動電位の成り立ちに関与する蛋白質にギャップジャンクションがあるが, ヒト病的心筋においては, 左室心筋細胞における細胞間接合因子コネキシン(Cx43)の減少および配列の乱れが心室性不整脈(VT/VF)の重大な素因となっている. われわれはウサギ心筋梗塞モデルにおいて, 重粒子線が左室におけるCx43発現を1年にわたって亢進し(AJP 2010), VT/VF誘発率を減少させることを明らかにした(Cardio Vasc Res 2006). しかし, ヒトの心臓に対する重粒子線照射による電気生理学的影響は明らかではない. 本研究の目的は, 縦隔に対する重粒子線照射予定患者を対象に高時間分解能ホルター心電計を施行し, 照射が心筋の不整脈基質に与える影響を評価することである(本研究はヒトにおける致死性心室性不整脈に対する重粒子線治療の実現に向けた前段階としての探索的研究である).
方法: 対象は2009年4月~全例調査とし, 現時点での登録患者は肺腫瘍9例である. 肺腫瘍患者はすべて縦隔に対する重粒子線照射が行われ, 事実上, 心臓に対する照射が行われた症例である. 重粒子線照射前, 照射後1週間(急性期), 照射後1, 3, 6ヵ月(慢性期)におけるホルター記録から, 不整脈出現回数と心室内遅延電位(LP)と再分極の不安定性(T波変動: TWV)を解析した.
結果: 平均照射回数は12.8回, 照射量は50.4Gy(グレイ)であった. 不整脈出現の有無については, 慢性心房細動が洞調律に回復; 1例, 発作性心房細動消失; 1例, 心室性期外収縮消失; 1例, 非持続性心室頻拍消失; 1例, 不変; 4例であった. LP については1例で, 照射により陰転化を示した(心室性期外収縮消失例). 今回はこの肺腫瘍例の心電記録について実波形を提示し, LP, TWVと不整脈消失の関係について若干の考察を加える.
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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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