抄録
心筋壊死の臨床診断として心臓MRI法による遅延造影画像(delayed enhancement; DE)が有用とされている. 心臓MRI法によるDEと心筋梗塞後の死亡予後との間に関連性が報告されているものの,致死性不整脈発生の非侵襲的心電図予測指標との詳細な検討は少ない. そこで,DEと体表面微小心電図(LP)や心拍変動指標(HRV),QT dispersion(QTD)と関係を検討した. 陳旧性心筋梗塞症例84例(69±9歳)に心臓MRI法とLPを施行し,一部の症例(26例)でHRVとQTDを測定した. HRVは24時間心電図からSDNN,SD index,SDANN,pNN50,rMSSD,HF,LF,TF,Fractal β(β)を求めた. 心臓MRI法は1.5T GE社製Sigma CV/iにてgadlinium(0.2mol/kg)投与造影下に左心室短軸6断面を撮像した. 心筋の壊死形態をmassive(1点)からpatchy(3点)までの程度により視覚的に1-3点でscore化し(patchy score; PS),LP陽性およびHRV,QTDの結果と比較した. LP陽性例22例とLP陰性例62例が認められ,壊死の形態を反映するPSはLP陽性例においてLP陰性例に比べ有意に高値を示した(2.3±0.5 vs.1.4±0.6,p<0.05). また,PSおよび壊死範囲を反映するDE断面数とpNN50,rMSSD,β,QTDは相関する傾向を示した.
結語: 心臓MRI法で求めたDEの形態やその範囲は,陳旧性心筋梗塞症例の致死性不整脈の予測因子として有用となる可能性が示唆された.