抄録
症例は44歳, 女性. 以前よりWPW症候群を指摘され, 失神前駆症状を伴う動悸のため当院へ紹介された. 12誘導心電図では, 後中隔副伝導路が示唆されたが, 心臓電気生理学的検査時は複数のQRS波形が認められ, 副伝導路が複数存在する可能性も示唆された. 上室性頻拍(PSVT)は3種類誘発され, いずれも左脚ブロック型のwide QRS頻拍であり, PSVT1とPSVT2は同一のQRS波形で, 心内の興奮伝播様式も同一であったが, VAおよびAV間隔が異なり相互の移行も認められた. PSVT3は前2者とは異なりデルタ波の極性と一致したQRS波形であった. また, 心房期外刺激ではjump up現象とそれに伴い副伝導路の伝導途絶が認められた. これらの一連の挙動は副伝導路としてnodoventricular accessory pathwayを想定すると説明可能であり, 洞調律下に最早期心室波を指標としてカテーテルアブレーションを行い, 副伝導路の離断後はいずれのPSVTも誘発不能となった. Nodoventricular accessory pathwayは非常に稀であり, 結節および心室端の付着部について考察を加え報告する.