抄録
症例は, 56歳, 男性. 主訴は動悸. 30歳頃の健診でWPW症候群を指摘された. 2010年2月の24時間心電図で, 心拍数153回/分のRR alternanceを伴うwide QRS頻拍を認め当院紹介となった. 同年4月に心臓電気生理学検査を施行したところ, 左室側壁に順行性副伝導路を認めた. 右室心尖部頻回刺激法では, 刺激頻度の増加に伴い, 逆行性最早期心房興奮部位は, 減衰伝導を有するヒス束から, それを有しない左室側壁に移行した. 高位右房早期刺激法では基本周期600msec, 連結期310msecでwide QRS頻拍が誘発された. QRS波形は洞調律時のδ波極性に一致し, いずれも副伝導路を順行し, ヒス束心房波を逆行性最早期心房興奮部位とする368msec(N)と498msec(N+1)の頻拍周期を交互に繰り返す頻拍を間歇性に認めた. RR alternanceを伴う頻拍は, AV間隔は190msecと一定であったが, VA間隔は186msec(N), 284msec(N+1)と変化していた. 以上からRR alternanceを伴う逆行性房室回帰性頻拍と診断し, 高周波カテーテル心筋焼灼術により左室側壁副伝導路の離断に成功した. その後, 高位右房早期刺激法で房室結節3重伝導路の存在と, 右室頻回刺激でintermediateならびにslow pathwayの逆行性伝導の存在が確認された.