抄録
症例は73歳, 女性. 2000年より動悸発作を認め, 2010年3月にnarrow QRS頻拍による心不全で入院. 薬剤によるコントロールが困難であったため, 同年9月アブレーション目的にて当科入院となった. 冠状静脈洞(CS)開口部が通常より著明に高位であり, His束はCS開口部とほぼ同等の高さに位置していた. 心房期外刺激によりjump-up現象から心房頻拍周期370msの頻拍が誘発され, His束に留置したカテーテルでの興奮順序はHis, 心房そして心室の順であった. 頻拍中でのreset現象はみられず, 心房興奮順序は, 心室刺激からの興奮と同様であったことから, 通常型房室結節回帰性頻拍症(AVNRT)と診断した. 電位指標により遅延伝導路をマッピングしたところ, CS開口部下方にfragmentしたslow pathway電位を認めた. 同部位において通電施行したところ, 房室結節調律を認め, 通電後はいかなるプログラム刺激によっても頻拍誘発は不能となった.
CS開口部と房室結節が平行に位置するKoch三角は極めて稀であり, また, CS開口部下方の遅延伝導路に対する通電により根治し得たAVNRTを経験したため報告する.