心臓
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第24回 心臓性急死研究会
震災を契機にVT・VF stormとなり心不全が進行し不幸の転帰をたどった不整脈原性右室心筋症(ARVC)の1例
榎本 善成野呂 眞人伊藤 尚志久次米 真吾森山 明義熊谷 賢太酒井 毅坂田 隆夫杉 薫
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キーワード: ARVC, 災害, VT storm
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2012 年 44 巻 SUPPL.2 号 p. S2_111-S2_116

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抄録

症例は29歳,男性.17歳時に不整脈原性右室心筋症(ARVC)による心室頻拍(VT)から心肺停止となり,植込み型除細動器(ICD)を植え込み経過観察していた.2011年3月11日の東日本大震災以降,動悸の訴えあり3月14日ICD作働を認めたため,当院緊急入院となった.入院時心電図は,左脚ブロック型,右軸偏位のHR100台の心室頻拍(VT)であり,over-drive pacing,各種抗不整脈投与でも停止しないため鎮静下でVTコントロールを開始した.約1週間の鎮静でコントロール後,持続するVTは消失したため,第48病日に独歩退院となった.しかし,その後も心不全悪化のために短期間で再入院を繰り返し,6月4日に再入院となった.心臓超音波検査(UCG)では,右心系の著明な拡大のみならず左室駆出率10%程度の両心不全の状態であり,入院後再度VT storm状態となった.鎮静下でのコントロールも無効であったため,補助循環装置(PCPS)導入したが,VT stormが鎮静化することなく,死亡した.震災を契機にVT storm状態となり心機能悪化が助長されたARVCの1例を経験した.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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