抄録
症例は22歳,男性.学校の授業で短距離走を行った直後に意識消失した.心室細動(VF)を認め,自動体外式除細動器(AED)にて4回DC施行後,自己心拍再開し,当院へ搬送された.低体温療法施行後3日目に抜管し,神経学的異常は認めなかった.心臓超音波検査および心臓MRIでは,心室中隔から心尖部にかけて肥厚を認めたが,流出路狭窄は認めなかった.冠動脈造影では有意狭窄を認めず,心筋生検では心筋線維の錯綜配列を認めた.レートポテンシャルは陰性であったが,右室心尖部からの期外刺激でVFが誘発された.また,判明した範囲内であるが,家族歴として母方の6等親内で8人の突然死を認めた.以上より突然死の家族歴を有する肥大型心筋症と診断し,2次予防目的で植込み型除細動器(ICD)植え込み術を施行し退院となった.本症例はVFが初発症状であり,今後,特に症状を有しない兄弟に対するリスク評価も必要と考えられ,若干の文献的考察を加えて報告する.