2012 年 44 巻 SUPPL.2 号 p. S2_87-S2_91
症例はエルゴノビン負荷試験にて冠攣縮性狭心症(VSA)と診断された72歳,男性.カルシウム拮抗薬と硝酸薬の内服治療を受けていた.内服治療開始から20年後,夜間に突然の心肺停止をきたした.救急隊により自動体外式除細動器(AED)治療が試みられたが作動が保留され,記録では無脈性電気活動(PEA)を認めた.救急外来に搬送され心肺蘇生にて心拍は再開した.入院後,再び徐脈性心房細動からPEAとなった.心肺蘇生後の12誘導心電図ではII,III,aVF誘導にてST上昇を認めたが,冠動脈造影では狭窄はなく,薬剤抵抗性冠攣縮性狭心症(VSA)としてカルシウム拮抗薬を増量し,本人・家族の同意のうえで植込み型除細動器(ICD)による治療を行った.心室細動ではなくPEAをきたすVSAは稀であり,ICD治療についての議論も含めて貴重な症例と思われ,若干の考察を加え報告する.